輸出管理法草案が全人代で審議入り、意見募集を開始

(中国、米国)

北京発

2020年01月14日

中国の輸出管理法草案が12月23日、第13期全国人民代表大会(全人代)常務委員会第15回会議で審議入りし、同月28日には全人代ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで草案に対する意見募集が開始された。募集は1月26日まで。輸出管理法については、商務部が2017年6月に草案を発表した際に一度意見募集を行った経緯があり、2019年の国務院の立法計画では、全人代で審議する法案の1つに挙がっていた。

草案によると、同法制定の目的は「核拡散防止などの国際義務を履行し、国家の安全と利益を守り、輸出管理を強化するため」と規定されている。また、同草案は、情勢の変化に応じて既存の6つの関連行政法規(注1)の実践を総括する必要があるとの認識の下、グローバルスタンダードを参考にして輸出管理業務を総合する法律を策定し、輸出管理政策や輸出管理リスト、輸出管理措置、監督管理などの基本的な制度の枠組みと規則を統一し、確立したものと位置付けられている(「法制日報」2019年12月24日)。

同法に対しては、2017年の意見募集時に日本など各国の業界団体から意見が提出されていた。具体的には、草案の起草説明の中に「重要戦略希少物資の保護」の視点が含まれること、中国に差別的な輸出規制を行った国に対して相応の措置を取ることを定める「対等原則」や「貿易や産業の競争力」「国際市場における供給」「技術の発展」に対する影響などを考慮して輸出管理規制や許可要件を定めるべきとの規定、再輸出やみなし輸出に対する規制、輸出審査時に不合理な技術開示要求を受ける可能性があること、最終ユーザーと最終用途の実地検証権限が規定されていることなどの点について懸念を示し、再検討を求めていた(注2)。

商務部条約法律司出身の弁護士の見方によると、前回の草案からの変更としては、輸出経営者のコンプライアンス義務が強化され、罰金額が引き上げられたこと、条文の簡素化と統合が行われたことなどがある。また、同弁護士は「対等原則」など関係者の意見を考慮して削除や修正されたとみられる箇所があることを紹介しつつ、定義が不明確な用語や関連法令での明確化が必要な部分があることも指摘している(「財新」1月2、3、7日)。

なお、中国政府は国家発展改革委員会を中心に「国家技術安全管理リスト」の策定に向けた検討を進めているとも報道されている(2019年6月13日記事参照)。リストの詳細は現時点では発表されていないが、ハイテク技術の中国国外への輸出を管理・制限するものになるとみられており、こちらも引き続き動向が注目される。

(注1)「化学品監督管理条例」「核輸出管理条例」「軍需物資輸出管理条例」「核両用品・関連技術輸出管理条例」「ミサイル関連品目・技術輸出管理条例」「生物両用品関連設備・技術輸出管理条例」を指す。

(注2)2017年草案に関する各国業界団体の意見書などは安全保障貿易情報センター(CISTEC)のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから参照できる。

(小宮昇平)

(中国、米国)

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