トルコは外交での解決を求める、イラン・ソレイマニ司令官殺害の余波

(トルコ、イラン)

イスタンブール発

2020年01月09日

トルコ外務省は1月3日、イラン・イスラム革命防衛隊ゴドス部隊のガセム・ソレイマニ司令官が2日夜にイラクで米軍に殺害された事件に関して、「イランと米国の関係の悪化を懸念する。イラクを戦場として利用することは、中東全体の平和と安定性にダメージを与える。トルコは関連する全ての国々に、この問題を外交的に解決するように呼び掛ける」と発表した。

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は4日、イランのハサン・ローハニ大統領に電話で弔意を伝えた。在トルコ・イラン大使館は「エルドアン大統領は殉教者ソレイマニ司令官の殺害を非常に悲しんでいる。イランの国民とローハニ大統領の怒りを理解できる」とツイートしたが、トルコ国営テレビTRT WORLDはトルコ政府関係者のコメントとして、「エルドアン大統領は電話協議で『殉教者』という言葉は発しなかった。大統領はイランに外交的な解決を勧めた」として、イラン大使館の発表を一部訂正するなど、明確なイラン支持には慎重な姿勢もみられたもようだ。

エルドアン大統領は翌5日のCNNローカル局のテレビ・インタビューで、ソレイマニ司令官の殺害は中東の安定に反するものだと述べる一方、米国・イラン両国が冷静に対処することを期待するとし、両国の関係悪化がエスカレートすることに懸念を示した。

トルコは友好国イランに同情的ではあるが、ロシアのS400ミサイルシステム導入に伴う制裁をめぐっては米議会と、東地中海の天然ガス田の開発をめぐってはEU・イスラエルと対立しており、シリア・イドリブ問題やリビア派兵でロシアとの友好関係にも陰りが見られるなど、外交関係が錯綜(さくそう)しているため、混乱がイラン・イラクに波及することは避けたいようだ。

トルコのメブリュト・チャウシュオール外相は、ソレイマニ司令官殺害に関して、エルドアン大統領がローハニ大統領のほか、イラクのバルハム・サリフ大統領、カタールのタミーム・ビン・ハマド・アール・サーニ首長、フランスのマクロン大統領、英国のジョンソン首相、ドイツのメルケル首相と電話で協議したことを伝え、1月8日にトルコを訪問するプーチン大統領とエルドアン大統領もこの件について意見を交換するとした。また、9日には自らがイラクを訪問すると述べた。

(中島敏博、エライ・バシュ)

(トルコ、イラン)

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