2019年の乗用車販売は前年並み、EVが拡大

(オランダ)

アムステルダム発

2020年01月30日

オランダ自転車・自動車工業会(RAI)は1月1日、2019年の乗用車の新車販売台数を前年比0.6%増の44万6,144台と発表した。3年連続で40万台を上回った。そのうち、電気自動車(EV)は当初の予想(2万8,000台)をはるかに超える5万台以上が販売されたとみられる。RAIは2020年の販売台数を42万5,000台と予想しており、EVの販売も全体の10%以上になるとみている(図参照)。

図 乗用車新車販売台数の推移

ブランド別の新車販売台数の上位は、フォルクスワーゲンが15年連続1位(4万7,542台、市場シェア10.6%)、2位はオペル(3万2,324台、7.2%)、3位はテスラ(3万911台、6.9%)となった。テスラは「モデル3」の販売台数を大きく伸ばしたのが要因。これに、プジョー(2万9,318台、6.6%)とトヨタ(2万7,128台、6.1%)が続く(表1参照)。

表1 ブランド別新車販売実績

モデル別では、テスラ「モデル3」(2万9,922台、6.7%)、フォルクスワーゲン「ポロ」(1万2,920台、2.9%)、フォード「フォーカス」(1万478台、2.3%)がトップ3で、フォルクスワーゲン「ゴルフ」(9,263台、2.1%)、起亜「ニロ」(9,235台、2.1%)と続く(表2参照)。

表2 モデル別新車販売台数

日系ブランドの新車販売台数は前年比0.9%増の6万9,548台で、シェアは15.6%(前年比0.1ポイント増)だった。トヨタは2万7,128台(前年比15.7%増)、日産は1万3,151台(15.3%減)、マツダは1万1,036台(13.3%増)、スズキは8,838台(16.0%減)、三菱自動車は6,358台(5.7%減)だった。トヨタは「カローラ」「RAV4」に加え、EV「アイゴ」が販売台数を押し上げた(表3参照)。

表3 日系ブランド別販売実績

EVでは、テスラ「モデル3」が2万9,922台で大幅に伸びた。現代「コナEV」は5,526台、アウディ「e-トロン」が4,116台と続き、日産「リーフ」は3,800台で4位だった(表4参照)。

表4 主なEV販売実績(2019年)

オランダでは、会社が乗用車を購入またリースして従業員に支給する「カンパニーカー」制度が一般的で、EVを購入する場合は購入価格の一部を経費として計上できるインセンティブがある。カンパニーカーを利用する従業員については、車両価格の一部は所得とみなされて課税対象になる。EVについては、通常車両よりも低い税率が適用されるインセンティブがあるが、近年このインセンティブは縮小傾向にある。EVに課される税負担が2020年1月1日から増えることも(2019年は取得価格の5万ユーロまでは4%、5万ユーロ超の分は22%が課税対象だったが、1月1日から4万5,000ユーロまでは8%、4万5,000ユーロ超の分は22%に変更)、2019年後半にEVの販売・登録が急増した要因だ。2021年には税負担がさらに増えるため(低率部分が4万ユーロまでに縮小され、税率も8%から12%に上昇)、2020年も前年同様、年末にかけてのEVの駆け込み需要が予想される。

また、RAIは1月18日、2030年までに都市物流のトラックの半分以上がEVになるとの研究機関ElaadNLの予測を紹介した。オランダ全体で14万3,000台ある大型商用車のうち、約3万台が店舗やスーパーマーケットなどに納入する都市物流のトラックだが、自治体のゼロエミッション・ゾーン指定の動きや、バッテリー価格の低廉化などによる電気トラックの供給増により、電気トラックの大幅な増加を予想している。

(高橋由篤)

(オランダ)

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