急進左派と連立の第2次サンチェス政権が発足

(スペイン)

マドリード発

2020年01月16日

スペインのペドロ・サンチェス首相が率いる中道左派・社会労働党(PSOE)と、急進左派・ポデモス党との連立政権が1月13日に発足した。

閣僚5ポストをポデモスに割り当て、財政問題などはPSOEが握る

第2次サンチェス内閣は多くのポストが前政権からの留任となったが、ポデモス党からの入閣を考慮して複数の省庁分割を行った結果、首相を含む閣僚ポストが従来の18から23と大幅に増加した(表参照)。これに伴い、一部の省で副大臣級の長官ポストが廃止された。また、女性閣僚が11人と全閣僚の半数弱を占めた。

ポデモス党は、パブロ・イグレシアス書記長が第2副首相兼社会権・2030アジェンダ相に就任したほか、労働相、平等相、消費相、大学相の計5ポストが割り当てられた。

さらに、第1次サンチェス政権では首相府相の1ポストのみだった副首相ポストを4つに増設。社会権・2030アジェンダ相に加え、経済・デジタル変革相、環境移行・人口問題相を副首相との兼任とした。当地報道によると、こうした省庁分割や副首相ポスト新設は、連立政権におけるポデモス党の存在感を薄めるためと指摘されている。

なお労働相ポストは、従来の労働・移民・社会保障省から社会保障部分を切り離し、労働・社会的経済省に改編した上で、ポデモス党に割り当てた。年金基金などの重要な財源を握る社会保障行政についてはインクルージョン・社会保障・移民省を新設し、独立財政監視機関(AIReF)のホセ・ルイス・エスクリバー総裁を大臣に起用。また、経済相ポストは元・欧州委員会予算総局長のナディア・カルビーニョ氏を続投させるなど、欧州委員会や金融市場に財政均衡スタンスをアピールした。

表 第2次サンチェス内閣の顔ぶれ

独立問題が国政に影響するリスク

第2次サンチェス政権は1月14日の初閣議で、経済成長に配慮しつつも、社会、地域、世代間格差の是正や気候対策を重視するとして、左派色の強い姿勢を打ち出した。法人増税やデジタル課税の導入、労働市場改革の一部廃止など、投資や雇用に悪影響を及ぼす恐れのある公約もみられ、経済界は懸念を強めている。

しかし、それ以上に不安視されるのが、今後の議会運営だ。サンチェス首相は1月7日の首相信任投票で、カタルーニャとバスクの独立派政党の棄権により、2票差という僅差で辛うじて続投を決めた。右派政党をはじめとする反対勢力は、急進左派や独立派と手を組んだ同首相への対決姿勢を強めており、少数連立の新政権は今後の法案成立でも独立派や地域政党の協力が不可欠となる。従って、独立問題や地方の事情が国政に影響するリスクもつきまとう。2020年予算法案の成立の可否が、政権にとっての試金石となるとみられる。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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