米上院財政委がUSMCA実施法案を承認、本会議で採決へ

(米国、カナダ、メキシコ)

ニューヨーク発

2020年01月08日

米国議会上院財政委員会は1月7日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)実施法案(HR5430外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に関わる審議を行い、賛成多数で承認して、上院本会議に送付した。上院での採決はトランプ大統領の弾劾裁判後とみられるが、協定発効に向けて必要な段階を1つ進めたかたちとなった。

財政委員会では発声による採決が行われ、賛成25票、反対3票で承認された。審議の冒頭、チャック・グラスリー財政委員長(共和党、アイオワ州)が、USMCAは農業団体や経済団体、労働組合の幅広い支持を得ている、と他の議員に支持を呼び掛け、ロン・ワイデン財政委少数党筆頭委員(民主党、オレゴン州)も民主党主導の修正交渉の結果を称賛した。法案は超党派の支持を集めた一方、反対票を投じたのは、パット・トゥーミー議員(共和党、ペンシルベニア州)、ビル・キャシディー議員(共和党、ルイジアナ州)、シェルダン・ホワイトハウス議員(民主党、ロードアイランド州)で、共和党議員からも造反が出た。

トゥーミー議員は反対理由として、USMCAのサンセット条項(加盟国全ての合意がない限り協定発効後16年目に失効する規定)によるビジネス上の不確実性と、それに伴う対米投資の減退の可能性を指摘したほか、手続き面でも、協定文書と実施法案が同じ日に提出され、通常行われるべき法案の修正機会がなかったことから、大統領貿易促進権限(TPA)法に違反していると批判した(注)。キャシディー議員は、投資家対国家の紛争解決手続き(ISDS)条項の適用が限定的で、米国の小規模石油・ガス企業のメキシコ事業に支障が生じるとの懸念を表明した。同議員の選挙区ルイジアナ州は油田が豊富なメキシコ湾に接しており、8万人近くが石油産業に従事している。ホワイトハウス議員は、USMCAの気候変動への取り組みが不十分と述べた。

上下両院でTPA法違反との指摘が出つつも、USMCA実施法案は今後15議会日以内に上院での採決が行われる予定だ。ただし、上院で多数派を形成する共和党は、トランプ大統領に対する弾劾手続きが終わらない限り、同法案は扱わないとしている(2019年12月20日記事参照)。

(注)TPA法では、大統領は最終的な協定文書を議会に提出してから実施法案を提出するまでに30日以上の期間を設けなければならないとの規定がある。USMCAについては、最終的に民主党主導の修正交渉の結果が反映されたテキストが2019年12月13日に公開され、同日に実施法案が下院に提出された。

(藪恭兵)

(米国、カナダ、メキシコ)

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