米下院がUSMCA実施法案を可決、上院での批准時期は弾劾裁判次第か

(米国、カナダ、メキシコ)

ニューヨーク発

2019年12月20日

米国議会下院は12月19日、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の実施法案を可決した。超党派の支持を得るUSMCAは今後、上院でも可決される公算が高いが、上院の採決時期をめぐっては、共和党内において、トランプ大統領に対する弾劾手続きの後に行うべきとの声が強い。

USMCA実施法案(HR5430外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、12月17日に経済・通商などを所管する歳入委員会で承認された後、下院本会議で385対41と圧倒的多数の賛成を得て可決された。審議過程では、医薬品データ保護やメキシコ労働法に対する監視メカニズムなど(2019年12月11日記事参照)が不十分との指摘が一部に出たものの、大半の議員はUSMCAが有権者にとって良い内容と評価した。他方、手続き面では、ビル・パスクレル議員(民主党、ニュージャージー州)が、大統領貿易促進権限(TPA)法に基づき、本来行われるべき委員会での法案の審査・修正(マークアップ)の余地がなかったことを批判した。こうした政権の進め方を議会軽視とする声は、日米貿易協定でも上がっている(2019年11月21日記事参照)。

法案は、TPA法にのっとり、上院で今後30日以内に採決にかけられるが、上院はトランプ大統領の弾劾裁判を控えており、同裁判は2020年1月に行われる見込みだ。民主党側は、2019年内の採決を求める書簡を出したが、上院で多数派を握る共和党上層部は、弾劾裁判が終了するまでUSMCA実施法案を扱わないことを明言している。他方、ナンシー・ペロシ下院議長(民主党、カリフォルニア州)は弾劾に関して、上院の共和党指導部が、民主党が要求している新たな証人喚問を拒否していることに反発し、下院で採択した弾劾条項の上院への送付を差し止める可能性を示唆している。従って、上院での弾劾裁判とUSMCA実施法案の審議が行われる時期は、現時点で未定の状態となっている。

米産業界の反応として、米国商工会議所のトーマス・ドナヒュー会頭は下院でのUSMCA法案可決直後に、「下院が強固な超党派の協力の下で、USMCAを可決したことを賞賛する」と進展を歓迎しつつ、「上院が迅速に行動することを促す」と、早期批准を呼び掛ける声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表している。

(藪恭兵)

(米国、カナダ、メキシコ)

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