クウェートへの労働者派遣を禁止、イラン、イラク、リビアも検討

(フィリピン)

マニラ発

2020年01月21日

フィリピン海外雇用庁(POEA)は1月3日、クウェートへのフィリピン人労働者の新規派遣を禁止する命令(以下、禁止命令)を発令した。

禁止命令は、2019年12月にクウェートで発生した、雇用主によるフィリピン人家政婦の殺害事件の発生を受けたもので、1月3日午後5時以降はクウェートへの新規派遣申請を全面却下するとした。禁止命令の発令以前にPOEAに申請のあった案件については、従来どおり承認される。

クウェートでは、2018年にも雇用主だったレバノン人がフィリピン人家政婦を殺害する事件が発生し、ドゥテルテ大統領が就労目的でのクウェート渡航を禁止すると同時に、既に滞在しているフィリピン人労働者の帰国を呼び掛けた。その後、派遣禁止は解除されたものの、両国の関係は一時悪化した。

2020年1月に発生した米軍によるイラン革命防衛隊の司令官殺害により中東情勢が緊迫化していることを受け、フィリピン政府はクウェートに加えて、イラク、イラン、リビアへのフィリピン人労働者派遣の禁止も検討している。

フィリピンでは、人口の1割に当たる約1,000万人が海外に居住し、フィリピンのGDPの1割に相当する約3兆円が毎年、フィリピン国内に送金される。こうした多額の送金がフィリピン国内の民間消費支出の底上げにつながり、7年連続6%以上の経済成長に貢献している。クウェートに居住するフィリピン人からの2019年1~10月の送金額は5億4,564万ドルに達し、送金元の国別で10位に入る(2020年1月8日記事参照)。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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