ドイツ連邦政府、脱褐炭・石炭の今後の方針を決定

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2020年01月31日

ドイツ連邦政府は1月16日、褐炭(注1)・石炭火力発電所を抱えるブランデンブルク州やノルトライン・ウェストファーレン(NRW)州、ザクセン州、ザクセン・アンハルト州と、脱褐炭・石炭の方向性について合意外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしたと発表した。

政府および上記4州は、現在予定している2038年より3年早い2035年までに、全ての褐炭・石炭火力発電所の廃止を目指し、これが可能か否かについて、2026年および2029年に再度、評価・検討する。今後、石炭火力発電所由来の電力に代わる代替電力源確保のため、再生可能エネルギー法(EEG)を改正し、再生可能エネルギーの拡大を促進するとともに、熱電併給システムの普及支援をさらに加速させる。

今回の措置に伴い、褐炭・石炭火力発電所および鉱業従事者に対し、早期退職賃金を2043年まで支給する。また連邦政府は、2038年まで4州に対し最大140億ユーロの資金提供をし、産業転換などへの投資を支援するほか、褐炭関連産業に依存する地域に対し、別途、最大260億ユーロの支援を行う。そのほか、医療技術や水素技術開発などに関する研究開発施設や新たなヘルムホルツ・センター(注2)を設立し、石炭・褐炭に依存する地域での新たなイノベーションの創出を支援する。さらに、今回の措置によって生じ得る電力料金の上昇に備え、電力需要の大きい企業に対して、2023年から補助金を支給し、国際的な競争力の確保を支援する。

事業者に対しても巨額の賠償

また、連邦政府は、褐炭・石炭火力発電所の事業者の早期廃止に対し、今後の15年間で43億5,000万ユーロの賠償を支払うとしている。特に古い8カ所の褐炭・石炭火力発電所は早期に廃止され、最も早いものは2020年内を予定する。

ペーター・アルトマイヤー経済エネルギー相は、今回の合意について「法的確実性および予見性の確保、気候目標の達成と合わせ、エネルギー供給の安定性も確保できる」と述べた。

これに対して、ドイツ産業連盟(BDI)のディーター・ケンプ会長は、電力コストの増加に対する補償内容や廃止の3年前倒しに向けた実現可能性を評価・見直す時期を2026年まで待つとした点について合意内容は不十分と指摘。連邦エネルギー・水道事業連合会(BDEW)のケルスティン・アンドレー代表も、評価・見直しの時期が遅いと指摘している(注3)。ドイツ商工会議所連合会(DIHK)のエリック・シュバイツァー会長は、今回の合意について歓迎の意を示す一方、「安定した電力供給が高水準で確保され、電力価格の高騰による競争上の不利益がこれ以上増加しない」ことが重要とし、警戒感を示している。

(注1)石炭の一種。石炭化度が低く、発熱量も低い。

(注2)社会に資する長期的な研究目標の達成のため、基礎研究などを行うドイツの科学研究組織。現在、国内に19の拠点を有し、約4万人が従事。年間予算は約48億ユーロ。重点分野は、1.エネルギー、2.地球と環境、3.健康、4.航空、5.宇宙と輸送、6.物質など。

(注3)BDIとBDEWは、2035年の廃止の実現可能性の最初の評価・見直しは2023年に実施するべきとしている。

(ベアナデット・マイヤー、森悠介)

(ドイツ)

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