欧州中銀、政策金利を据え置き、金融政策の戦略再検討の詳細も発表

(欧州、EU)

デュッセルドルフ発

2020年01月24日

欧州中央銀行(ECB)は1月23日、ドイツ・フランクフルトで開催された政策理事会後の記者会見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、政策金利(主要リファイナンス・オペ金利)を0.00%、限界貸付ファシリティー金利(オーバーナイト貸し出し、翌日返済)を0.25%、預金ファシリティー金利をマイナス0.50%にそれぞれ据え置くと発表した。据え置き期間についても、前回2019年12月の発表と同様に、「物価上昇率が2%未満かそれに近い水準に十分に近づき、物価上昇基調に持続的に反映されるまで」として、具体的な期間に触れない立場を堅持した。

さらにECBは、ユーロシステムによる債券・国債の購入プログラム(APP:asset purchase programme)について、月額200億ユーロ規模で、緩和政策の効果を高めるために「必要な限り」金利の引き上げ開始前まで継続することを確認した。APPの下で購入し保有する債券・国債の再投資については、主要政策金利の引き上げ開始以降も続ける方針をあらためて示した。

政策戦略の再検討では、従来の項目に加えて雇用や環境にも配慮

また、クリスティーヌ・ラガルドECB総裁は「経済が劇的な変化を遂げているため、今こそ欧州の利益を最優先に任務を遂行するための戦略の見直しが必要」と指摘した上で、前回の記者会見(2019年12月13日記事参照)で発表した政策戦略の再検討について詳細を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同再検討では、物価安定の数値目標、量的緩和やマイナス金利などの価格安定のために必要な全ての金融政策手段とその有効性、経済・金融の分析手法、市場との対話の進め方など、ECBの政策戦略を進める上での全ての要素が対象になる。マイナス金利の導入をはじめとしたこれまでの金融政策の有効性や潜在的な副次作用についても議論を進める。また、金融安定や雇用、環境の持続可能性についても考慮する。特に環境問題に関しては、「気候変動や生物の多様性の保全について、自分が何をできるかを考えることは全ての人の責任」とし、将来的なAPP下でのグリーンボンド(注)の積極的な購入を含め、中央銀行としての役割を探っていくとした。同再検討は、2020年末までに終了する予定としている。

さらに、ラガルド総裁は記者会見で、「地政学的要因や保護主義の台頭、新興市場の脆弱(ぜいじゃく)性などに関するユーロ圏の成長見通しを取り巻くリスクについて、依然として下振れ傾向にある」とする一方、そのリスクは「国際的な貿易に関する不確実性が減少しつつあるため、多少和らいだ」として、状況が改善しつつあるとの見方も示した。また、ECBが掲げる物価上昇率の実現には、さらなる緩和方針の維持が必要と指摘している。

(注)調達資金の使途を環境改善効果のある事業(グリーンプロジェクト)に限定して発行される債券。

(ベアナデット・マイヤー、森悠介)

(欧州、EU)

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