在ロシア日系企業実態調査、マクロ経済の減速も約7割が営業黒字を維持

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2020年01月22日

ジェトロは1月20日、2019年度ロシア進出日系企業実態調査の結果を発表した。2019年の営業利益見通しについて、「営業黒字」を見込む企業の割合は68.3%と、3年連続で約7割を維持した。ロシアでは世界経済の成長鈍化に伴う輸出減、付加価値税の増税や実質可処分所得の減少に伴う小売市場の不振などを背景に、マクロ経済の減速がみられるが、そのような状況下でも、現地市場での売り上げ増加や販売効率の改善などから、好調を維持していることが分かった。

前年と比較した場合の2019年の営業利益見込みについては、「横ばい」が前年比7.1ポイント増の42.2%で過去最大となった。2020年の営業利益見通しでも、「横ばい」が52.0%(9.0ポイント増)となり、景気減速の中で黒字は維持するものの、営業利益は「横ばい」とする企業が増加した。

今後の事業展開について、「拡大」と回答した企業が44.1%(9.4ポイント減)で、2年連続減少。「現状維持」が過去最大の53.9%に達し、様子見の感が強まっている。「拡大」の主な理由として、「現地販売市場での売り上げ増加」が最も多く、「拡大」と回答した企業のうち、非製造業では「販売機能」、製造業では「物流機能」の強化に注力するとの声が目立った。

経営上の問題点について、販売・営業面では、「競合相手の台頭(コスト面で競合)」が53.5%(2.6ポイント増)で引き続き最多となり、地場系企業との競合激化が問題となっている。財政・金融・為替面では、「現地通貨の対ドル/ユーロ為替レートの変動」が前年比13.7ポイント減の45.1%となったが、引き続き最多。加えて、「税務の負担」が9.1ポイント増の28.4%に拡大。2019年1月に実施された付加価値税増税(18%→20%)の影響とみられる。貿易制度面では、「通関などの諸手続きが煩雑」(40.0%)の割合が減少(12.6ポイント減)したが、ロシア当局の通関制度改善に関する取り組みの過去1年の変化に関しては、多くの項目で「変化なし」が過半となった。生産面では、「現地調達の難しさ」が過去最大となる56.5%に達し、初めて過半になった。「限界に近づきつつあるコスト削減」が10.9ポイント増の26.1%となり、「コスト削減」に向け現地調達の拡大などを図るものの、それが容易でない状況が浮き彫りとなった。

投資環境面の評価に関し、メリットとして「市場規模/成長性」が67.0%(前年比11.1ポイント減)で7年連続トップ。リスクは「不安定な政治・社会情勢」(61.8%)、「不安定な為替」(60.8%)、「行政手続きの煩雑さ(許認可など)」(57.8%)が引き続きトップ3として指摘されている。対ロシア経済制裁について「影響あり」と回答した企業が55.4%(7.2ポイント増)となり、「現地市場での売り上げ減少」や「日本本社でのロシアビジネスのプライオリティー低下」「取引先変更」などの影響が生じている。

今回の調査は2019年10~11月にかけて実施。ロシアに現地法人(日本からの直接投資または間接出資比率が10%以上)や支店の形態で拠点を構えている企業121社に送付し、うち102社(製造業28社、非製造業74社)から回答を得た。調査は2013年度から毎年実施しており、今回で7回目。調査結果の詳細はジェトロ・ウェブサイトPDFファイル(2.9MB)に掲載されている。

(加峯あゆみ)

(ロシア)

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