10・11月のインフレ率は前年同月比5%超え、食料価格が大きく上昇

(ラオス)

ビエンチャン発

2019年12月26日

ラオス計画投資省国家統計センターの発表によると、10月のインフレ率は前年同月比で5.34%と、2014年4月以来初めて5%を超え、11月も5.92%と高い水準で推移した(図参照)。2019年1~11月の平均は3.04%となった。ラオスのインフレ率は2014年から、原油価格の下落などの影響で通年1~2%程度の低水準で推移(注)していた。

11月の項目別インフレ率のうち、前年同月比で最も高かったのは食料で、10.20%となった。要因として、(1)雨季初期の雨不足、(2)8~9月の洪水被害によるコメの収穫量の低下、(3)タイ通貨バーツ高に伴う輸入食品価格の上昇が大きく影響したとみられる。

2019年は干ばつにより、雨季(5~10月)の降雨量は前年の41%程度だった。メコン川委員会によると、メコン川の水位は60年ぶりの低水準に陥っており、今後も河川からの揚水潅漑に依存している11月~2020年3月の乾季稲作への悪影響が指摘されている。

他方、8~9月の集中豪雨により、全国の水田面積の14%相当の10万ヘクタールが大きな被害を受け、洪水後の市場の精米価格は1キロ当たり6,700キープ(約80円、1キープ=約0.012円)から1万キープへと高騰した。通常、コメの収穫シーズンに当たる10~11月に価格は安定していくが、2019年は大きく上昇している。ラオス政府は備蓄米を市場へ放出するなど価格抑制策を取っているが、十分な効果は出ていない。

また、11月のバーツはキープに対して、前年同月比で12.83%上昇した。ラオスではインスタント麺など多くの加工食品をタイから輸入しており、バーツ高・キープ安の影響がみられる。

インフレ率の上昇は国民生活に影響を与え始めており、11~12月に国民議会が設置したホットラインにはインフレ対策の要請も多く寄せられたという。このような中、約3年ごとに改正されている最低賃金の協議が10月から始まっており、同協議への影響も考えられる(2018年5月8日記事参照)。

図 ラオスのインフレ率の推移(各月)

(注)各年の平均インフレ率は2012年4.37%、2013年6.37%、2014年4.13%、2015年1.28%、2016年1.60%、2017年0.83%、2018年2.04%。

(山田健一郎)

(ラオス)

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