米中が第1段階の貿易交渉で合意、対中追加関税リスト4B発動は見送り

(米国、中国)

ニューヨーク発

2019年12月16日

米国通商代表部(USTR)は12月13日、米国と中国が貿易交渉で第1段階の合意に達したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。米国側は、12月15日に予定していた対中追加関税リスト4B(輸入額1,560億ドルに相当する品目、注1)の発動を見送るとともに、9月1日に発動した対中追加関税リスト4A(輸入額1,200億ドルに相当する品目)の追加関税率を15%から7.5%に引き下げる(添付資料参照)。既に発動されているリスト1~3(輸入額2,500億ドルに相当する品目)の追加関税率は25%のまま据え置きとなる。リスト4B発動の見送りについては、12月18日に官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで正式に公示する。また、リスト4Aの追加関税率の引き下げに関しては、近日中に発表するとしている。

リスト4Aへの追加関税率は7.5%に引き下げへ

USTRによると、米中は第1段階の合意として、表に記載の事項で合意した。ロバート・ライトハイザーUSTR代表とスティーブン・ムニューシン財務長官はいずれも、プレスリリースの中で、今回の合意を意義の大きな成果とし、合意に至るまでのトランプ大統領のリーダーシップをたたえる声明を出している。

表 米中貿易交渉における第1段階合意の概要

ただし、米国側の対中追加関税の取り決め以外は、具体的な内容はまだ何ら明らかにされていない。中国国務院が現地の12月13日深夜に行った記者会見で王受文・中国商務次官は、両国間での合意文書の法的な確認などにもう少し時間がかかるとし、それらが完了した後に署名のための場所と時期を決めるとしている。

産業界は好感も、議会の対中強硬派は政権を批判

米国の産業界は、今回の合意を歓迎する声明を相次いで発表している。米国商工会議所は「(リスト4Bの)関税とそれが消費財・サービスにもたらす高いコストから解放されたことは、米国のビジネスと消費者にとって歓迎すべきギフトだ」との声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを出している。リスト4B追加関税には、中国からの輸入依存度が高い消費財が多く含まれていたため、米小売業に打撃を与えることが見込まれていた。全米小売業協会(NRF)も声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで「この数カ月で初めて、米国と中国は関税について正しい方向に向かっており、われわれは両国の交渉担当者がもたらした進展を祝福する」としている。NRFも加盟するロビイング団体のアメリカンズ・フォー・フリー・トレード(注2)は12月11日、トランプ大統領に対して、中国との間で早期に第1段階合意に至るよう要請する書簡PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を出していた。他方、いずれの業界団体も、最終的には米中双方が追加関税を完全に撤廃し、包括的な合意に至るよう政権に注文を付けている。

米国議会において対中強硬派で知られるチャック・シューマー上院院内総務(民主党、ニューヨーク州)は「大豆を購入するという中国の信頼できない約束に乗せられた」と、マルコ・ルビオ上院議員(共和党、フロリダ州)は「交渉のてことしての関税を撤廃するリスクを検証すべき」と、それぞれ自身のツイッターでトランプ政権の交渉方針を批判している。

今後の交渉の見通しについて、トランプ大統領は自身のツイッターで「われわれは、2020年の(大統領)選挙後まで待たずに、第2弾の交渉をすぐに開始する」としている。第2段階には、今回含まれなかった、中国政府による国有企業などへの補助金の問題などが扱われるとみられている。しかし、米国の識者によっては、補助金政策は中国の国家資本主義の根幹をなす部分であることや、米国が2020年に大統領選挙を控えていることから、第2段階の合意などはないかもしれない、とみる向きもある(2019年11月21日付地域・分析レポート参照)。

(注1)USTRは当初、9月1日発動分をリスト4A、12月15日発動分をリスト4Bとして分けて公表していたが、現在はリスト4Aは官報のANNEX AおよびBを、リスト4BはANNEX CおよびDPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を参照とのかたちで再掲載されている。

(注2)自由貿易を重視する168の業界団体で構成されたロビイング団体。中には、業種別や州レベルの団体も含まれる。

(磯部真一)

(米国、中国)

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