送電網の中国支配を懸念し上院が監査要求、送電企業は受け入れへ

(フィリピン)

マニラ発

2019年12月10日

送電企業のフィリピン国家送電会社(NGCP)は11月27日、送電網が中国企業に支配されているとする懸念に基づいて安全監査を求める上院の決議案に関して、懸念は杞憂(きゆう)であり、安全監査も受け入れると発表した。11月28日でジーエムネットワークほか地元各紙が報じた。

NGCPには中国の送電企業大手の国家電網が40%を出資し、フィリピン企業のモンテ・オロ・グリッド・リソーシスとカラカ・ハイ・パワーが30%ずつ出資する。NGCPのアンソニー・アルメダ社長は、10人いる役員のうち国家電網出身の役員は3人のみで、国家電網はNGCPの経営権やシステムのコントロール権を有する立場ではなく、技術指導を行っているだけだと主張した。アルメダ社長はさらに、上院議員や第三者による安全監査をいつでも受け入れることは可能であり、ここ数日提起されている懸念も払拭(ふっしょく)できるとした。

フィリピン国家通信委員会(NTC)は11月中旬の上院エネルギー委員会で、国家電網がフィリピンの送電網を中国・南京の施設からリモートコントロールしており、いつでもフィリピンの送電網をシャットダウンできると主張した。同委員会のガチャリアン委員長は、海外からの投資は誘致しなければならないが、フィリピン国民の安全を脅かす投資は避けなければならないと述べた。

フィリピンでは、送電網だけでなく通信網でも中国企業の影響が拡大しており、NTCは7月、国内第3の通信事業者として、中国電信(チャイナテレコム)が40%出資するディト・テレコミュニティーに事業許可証を付与した。PLDTとグローブテレコムの2社による寡占が続いていたフィリピンの通信市場に同社が新たに登場することで競争が起こり、通信費用や通信環境が改善することが期待される一方、国民からは中国企業の通信網への関与は国家安全に関わるとの懸念も上がっている。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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