消費者の好みに対応、「ティムール大帝のワイン」へのこだわり守る

(ウズベキスタン)

タシケント発

2019年12月03日

中央アジアのウズベキスタンでワインが造られていることはあまり知られていない。日照時間が長いウズベキスタンのブドウは非常に甘く、一般的にはスイートワイン向きと言われる。一方、国内消費者の嗜好(しこう)の変化や外国の需要に応じ、ウズベキスタンのワインメーカーは国外からブドウ品種を導入し、ドライワインの製造に力を入れ始めた。ワインの名産地・サマルカンド州の「バギザガン」のユーリ・バルタザロフ貿易部長に話を聞いた(インタビューは11月23日)。

(問)「バギザガン」という名前の由来、ワイン造りにこの土地が向いている理由など。

(答)「バギザガン」とは「鳥の庭」という意味。14世紀にサマルカンドに王朝を開いたアミール・ティムールの所領地だったと言われている。この地はゼラフシャン川とパミール山脈(高原)に挟まれ、川の湿気と冷気が南の山脈で受け止められるブドウ作りに適した土地だ。ウズベキスタンのワイン造りの本場はタシケント州パルケント、サマルカンド州バギザガンの2つが有名。当工場はサマルカンド州のワインメーカー5社のうちの1社。1964年の創立で、従業員(技術者)は100人を数える。

(問)生産方法、販売方法などで大きく変わった点は。

(答)以前は農家との契約栽培でブドウを調達していたが、他社との価格競争が厳しかった。2003年に当時州知事だったシャフカト・ミルジヨエフ大統領に400ヘクタールの農場を与えられ、自社栽培へ切り替えた。2008年の初収穫以降、ブドウを有機栽培している。収穫量は2017年が5,000トン、2018年は7,000トン。2019年は3,000トンと少なかったが、品質を確保するため外部からの調達は行っていない。ワイン製造量の50%が白のドライワイン、20%が赤、デザートワイン、30%がブランデーなどの蒸留酒。2018年2月に政府がワイン産業振興支援を決定し(注)、ワイン向けブドウ栽培の土地税が免除され、国内産自然栽培ブドウによるワインの区分がアルコール製品から「農産品」に変わり、販売ライセンスが不要で誰でも販売できるようになった。ワイン製造業者のモチベーションは大いに上がった。

(問)国内のワインの嗜好、国内・外国向けの比率、輸出の状況など最近の変化について。

(答)ウオッカなどのハードリカーからドライワインに乗り換える消費者が増えている。海外旅行増加の影響でワインへの理解が進み、夏に白のドライワインがよく飲まれるようになった。国内、外国向け出荷比率は半分ずつだが、国内需要が高まっている。輸出はロシアや中央アジア諸国が中心。アジア向けにも試験輸出しているが、課題は輸送費。タイまでコンテナで輸送すると、ワイン1本(原価2ドル)当たり3.5ドルの輸送費がかかる。この価格(1本5.5ドル)では、イタリアワインなどとの競合もあって、知名度のないウズベキスタン産ワインには厳しい。政府に輸送費を負担してもらい、その分を国外市場のマーケティング、ブランディングに利用できるよう要望を出している。農場ではフランス、ジョージアなどのブドウ品種を栽培するが、ウズベキスタンの独自な環境で生育し、ワインの味もオリジナルの味に仕上がっている。

(問)日本とのビジネスに意欲は。

(答)日本企業との交流も出てきた。日本からサマルカンドへの旅行客が増え、2019年は3回、合計50~60人ほどの団体を受け入れた。工場では試飲も行っている。旅行会社を通じて予約を受け付けている。アグロツーリズムの一環で2022年までに80人が宿泊できる施設を建設する予定。ぜひ「ティムール大帝のワイン」を味わってほしい。

写真 「バギザガン」のユーリ・バルタザロフ貿易部長。ワイン造り一家の3代目(ジェトロ撮影)

「バギザガン」のユーリ・バルタザロフ貿易部長。ワイン造り一家の3代目(ジェトロ撮影)

写真 「バギザガン」ブランドの白ワイン(ジェトロ撮影)

「バギザガン」ブランドの白ワイン(ジェトロ撮影)

写真 地下貯蔵庫。建設予定のホテル地下から直接つなげる予定という(ジェトロ撮影)

地下貯蔵庫。建設予定のホテル地下から直接つなげる予定という(ジェトロ撮影)

写真 工場。サマルカンド中心部から車で30分。空港方面にあり、気軽に寄れる(ジェトロ撮影)

工場。サマルカンド中心部から車で30分。空港方面にあり、気軽に寄れる(ジェトロ撮影)

(注)2018年2月28日付大統領決定第3573号。

(高橋淳)

(ウズベキスタン)

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