金融市場、過去最低水準への利下げを好感
(ブラジル)
サンパウロ発
2019年12月20日
ブラジル中央銀行の金融政策審議会(COPOM)は12月11日、政策金利(SELIC)5.0%を0.5ポイント引き下げて4.5%とすることを全会一致で決定した。米国の格付け機関スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は同日、ブラジル外貨建て長期国債の格付けをこれまでのBBマイナス「安定的」から同「ポジティブ」へと変更し、格付けが将来上がる可能性を示唆した。翌12日のブラジル金融市場は今回の利下げと格付け変更を好感し、サンパウロ証券取引所の株価指数(IBOVESPA)は12日、前日比1.11%増の112,199ポイントと過去最高値を更新した。通貨レアルの対ドルレートも1ドル=4.09レアルと前日比0.62%のレアル高となった。カントリーリスク指標として利用されているブラジルの5年物CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のスプレッドは103ベーシスポイントまで低下し、2013年5月以来の低水準となった。
ブラジルの政策金利は2013年に7.5%だったが、その後断続的に利上げが行われ、2015年には14.25%に達した。しかし、2016年8月に発足したミシェル・テーメル政権は段階的な利下げを行い、2018年末には6.5%まで低下した。1月に発足したジャイール・ボルソナーロ政権下では、7月以降今回までに0.5ポイントずつ4回連続で引き下げられ、政策金利は過去最低水準となった。
投資顧問会社Infinity Assetの「2019年12月実質金利ランキング」によると、ブラジルはこれまで実質金利が高いトップ10にランクインしていたが、今回は実質金利が0.64%と11位。シンガポール(0.80%)と韓国(0.44%)の中間の水準まで低下した。ブラジルでは、景気が上向き国内需要が高まるとインフレ基調となることから、金利を引き上げてきた。今回の利下げについて中銀は、2019年第2四半期(4~6月)以降の経済活動は第1四半期(1~3月)までと比較すると緩やかな回復が継続しているものの、急速な成長ではなく、かつまた、基礎的物資の物価水準が適正な水準で推移していることから、利下げを行ったと説明している。
また、主要国が金融緩和策を採用したことなどを受け、ブラジルなど新興国にとっては利下げ可能な環境が生まれたとも分析している。
前回のCOPOMでは、今後0.5ポイントの追加利下げの可能性を示唆していた。ただ、11月のレアル安の進行や食肉価格高騰で11月のインフレ率(IPCA)が0.51%を記録したため、金利据え置きの観測もあった。今回のCOPOMでは、追加利下げが実施された一方で、2020年初のさらなる利下げの可能性は示されなかった。12月9日付の中銀の週次レポート「フォーカス」では、2019年末の政策金利を4.50%、2020年末も4.50%と金利据え置きを予想している。
(大久保敦)
(ブラジル)
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