世界初の水上原発、極東北部の電力網に接続

(ロシア)

モスクワ発

2019年12月27日

ロシアの原子力公社ロスアトムの発表(12月19日)によると、世界初の船舶型水上原子力発電所「アカデミク・ロモノソフ」が同日、極東北部のチュクチ自治管区ペベク市のチャウン・ビリビノ送電網に接続された。

アカデミク・ロモノソフの商業運転の開始は2020年を予定しており、実現するとロシアで11番目の原子力発電所となる。チュクチ自治管区にはビリビノ原発が既にあり、同じ連邦構成体内で2つの原発が稼働するのはロシアで初めてとなる。アカデミク・ロモノソフは熱供給機能も持ち、陸上の熱供給網への接続は2020年に完了する予定だ。

アカデミック・ロモノソフの設計はロスアトムによって行われ、KLT-40C原子炉2基(各出力35メガワット)が搭載されている。船の全長は144メートル、幅が30メートル、排水量が2万1,000トンだ。

アカデミック・ロモノソフは、将来検討される水上原子力発電所の艦隊化およびロシア製小型モジュール原子炉向け陸上施設の整備に向けた「実用プロトタイプ」と位置付けられている。

ロスアトムによると、小型モジュール原子炉を利用した原発(各原子炉の出力300メガワット以下)には水上型と陸上型があり、到達困難なへき地、小規模送電網、送電網に接続されていないオフグリッド電力設備に電力を供給できるように設計される。特に長い海岸線を持ち、電力網へのアクセスが制限されている地方で有効に活用できる。このため、ロシア北部や極東のへき地への配置のほか、輸出も検討されている。

小型モジュール炉は、3~5年間燃料を補給する必要がなくノンストップで稼働できるため、発電コストを大幅に削減できる。へき地などの環境では、風力や太陽光など再生可能発電設備が使われることがあるが、バックアップ電源のため環境負荷の大きいディーゼル燃料やエネルギー貯蔵施設が必要となり、高コストになるという。

(タギール・フジヤトフ)

(ロシア)

ビジネス短信 caf2348d23431fc8