チリも少子化の波、出生率が過去最低に

(チリ)

サンティアゴ発

2019年12月02日

チリ統計局(INE)の発表(11月15日)によると、2017年のチリの出生数は前年比5.4%減の21万9,186人だった。世界銀行が公表している合計特殊出生率調査でも、2017年におけるチリの出生率は1.68人と過去最低を記録した(図1参照)。1960年に4.70人だった出生率は、2002年に2.00人を下回った後も毎年、逓減し続けている。国別にみると、最高がニジェールの7.00人、最低が韓国の1.05人で、世界平均は2.43人だった(図2参照)。チリは、中南米諸国の中でセントルシア(1.45人)、バルバドス(1.62人)、キューバ(1.64人)に次いで出生率が低く、米国や日本などに近い水準であることが分かる。

図1 チリの合計特殊出生率の推移
図2 国別合計特殊出生率の推移

チリ産婦人科学会のリカルド・ポメル会長は、11月19日付「ラ・テルセラ」紙で、チリの出生率低下の要因として、子育てにかかる費用が高額なことや、高学歴化により女性の社会進出が進んだことを挙げている。これらの要因に伴い、仕事と家庭の両立が困難となり、出産よりも自身のキャリアを優先する女性が増えたことに起因して、数値の低下がもたらされたと分析している。同分析を裏付けるデータとなるINEが行った2017年の国勢調査結果によれば、チリにおける女性の就労率は1960年の22.4%から48.5%に増加し、高等教育を受けた女性の割合は1992年の10.8%から29.7%まで増加している。

チリ政府は、働く女性を後押しするための法整備を進めている。従来の労働法では、女性労働者20人以上を有する企業に対して保育所の設置を義務付けていたが、現在、上院において審議中となっている新法案には、2歳未満の子供を持つ全ての労働者に、子供を保育所に通わせるための補助金を出すことなどが含まれている。

(岡戸美澪)

(チリ)

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