ベラルーシ政府、中国開発銀行から約5億ドルの借款受け入れ

(ベラルーシ、中国)

欧州ロシアCIS課

2019年12月26日

ベラルーシ財務省は12月16日、中国開発銀行上海支店と35億元(約5億ドル相当)に上る借款受け入れ契約を締結したと発表した。

財務省によると、今回の契約は特定のプロジェクトにひも付いたものではなく、国家債務の償還・返済、2国間の貿易拡大など、さまざまな目的に利用可能としている。財務省は、ベラルーシと中国開発銀行の関係が新しい段階に達したことを示す前例のないものであり、ベラルーシにおける中国の金融機関の信用を高めるとし、契約締結を支援した中国開発銀行ミンスク事務所と、最大手行ベラルーシ銀行北京事務所の活動を評価した。

ベラルーシ政府が中国からの融資獲得に動いた背景には、ロシアとの関係見直しがある。ロシアはこれまでにも定期的にベラルーシの対ロシア債務の借り換え支援を行ってきたが、ロシアの高級紙「イズベスチア」(12月18日)によると、ベラルーシは2019年2月にロシアに対して6億ドルの融資を申請し、4月に合意の回答を得たものの、その後、ロシアのアントン・シルアノフ第1副首相兼財務相が「融資はベラルーシとの連合国家(注)を通じて拠出する」と発言するなど、連合国家構想を強く推し進める政治的圧力をベラルーシにかけたため、ベラルーシ政府が反発。それに伴い、中国からの融資受け入れに切り替えたようだ。今回の中国からの融資は主として対ロシア債務の償還に充てられるとみられている。

今回の契約締結について、ベラルーシの政治評論家アレクセイ・ゼルメント氏は「政治的決断」と評する。近年、ロシアからの融資実行が遅れがちだったこと、ベラルーシがロシアの提示する融資条件に満足していなかったこと、中国とベラルーシが政治・経済両面で長い間良好な関係を築いてきたこと、今後、中国との長期の金融・融資関係を発展させたい意向があること、習近平国家主席とアレクサンドル・ルカシェンコ大統領の個人的な関係などによって、同氏は「ベラルーシにとって中国は考慮に値する融資代替先の1つとなった」と述べた(ロシアメディア「ニュース・ルー」12月16日)。

経済発展省付属全ロシア貿易アカデミー国際経済・金融研究所のユーリ・ザイツェフ副所長は「ベラルーシにとって中国は唯一の代替先」と指摘する。西側諸国はルカシェンコ政権に融資を行わず、他の国・地域もベラルーシの財政状況に鑑み、融資をためらっているためだ。同氏はさらに、「中国は融資先の国に対して、中国企業のプレゼンス拡大につながる経済的要求を行うため、中国による融資はロシアによる融資よりも高くつくが、ベラルーシ政府はその点を不利と思いつつも、ロシアの政治的圧力に比べれば受け入れられると判断したのではないか」と述べ、今回の中国への切り替えは「ロシアのベラルーシに対する圧力を緩和するもので、ベラルーシは今後、ロシアとより柔軟に交渉ができるようになる」と評した(ロシア紙「ベドモスチ」7月9日)。

(注)1999年12月に締結されたロシアとベラルーシによる連合国家創設条約に基づき、段階的に政治、経済、軍事、通貨、法令などの統一を目指すもの。当初はベラルーシによって立ち上げられた構想だが、その後、ロシアがベラルーシに対して吸収合併を示唆する発言が続き、ベラルーシがロシア主導の連合国家推進に反発・警戒している。

(齋藤寛)

(ベラルーシ、中国)

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