税制改革第3弾「固定資産評価改革法案」が下院通過、630億円税収増へ

(フィリピン)

マニラ発

2019年12月05日

不動産など固定資産価格の評価、査定方法を国際的な基準に統一する固定資産評価改革法案(下院第4664号法案)が11月25日、下院を通過した。これまで地方政府ごとに異なる基準で実施されていた固定資産評価方法が統一されることにより、政府は300億ペソ(約630億円、1ペソ=約2.1円)の税収増を見込む。法案は翌日に上院へ移され、まもなく法案審議が開始される見込みだ。

固定資産評価改革法案の第12条は、課税対象の有無を問わず、当該固定資産が所在する都市や市場の実勢価格に基づいて当該固定資産を評価することを定める。なお同法案は、有形固定資産を対象とし、無形固定資産は対象としていない。

また、固定資産の評価を承認する権限を、地方政府から財務省に移管することを定め、第13条は、各地方政府が所管する固定資産の価値を、財務省が定める基準を用いて不動産鑑定士が評価すると定め、第14条は、財務省長官が第13条の方法で評価された固定資産の価値を30日以内に承認し、承認から15日後に公示されるものとした。

一方で、フィリピン憲法が規定する地方自治に、同法案が反しているとする声もある。マニラ市長を3期務めたアティエンザ氏は「固定資産の評価は憲法が規定する地方政府が有する権限の1つで、同法案は憲法違反だ」とし、裁判所への訴えを辞さないとした。また、中央政府が当該権限を保有することはさらなる汚職を生むことになると主張した。

同法案は、ドゥテルテ政権が進める税制改革の第3弾に位置付けられ、第1弾(各種物品税増税および個人所得税減税)は2018年1月に施行済みで、第2弾(経済特区優遇税制見直しおよび法人税減税)および第2弾プラス(酒類・電子たばこ増税)は上院で審議中の状況だ。ドゥテルテ大統領は2019年7月に実施した施政方針演説(SONA)で、固定資産評価改革法の成立を訴えていた。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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