中国所長セミナー、「外商投資法などへ早めの対応を」

(中国)

中国北アジア課

2019年12月20日

ジェトロが12月5日に東京で開催した「現地所長が語る 中国から見た米中貿易摩擦」セミナーの後半では、森・濱田松本法律事務所の上海オフィス首席代表・弁護士の石本茂彦氏が「外商投資法など中国の最新外資政策の概要とその影響」について講演した。

写真 森・濱田松本法律事務所の石本茂彦氏(ジェトロ撮影)

森・濱田松本法律事務所の石本茂彦氏(ジェトロ撮影)

中外合弁会社は早めに組織体制・ガバナンスの変更を

外商投資法は、外国から中国への投資(外商投資)に関する新しい基本法で、2020年1月1日から施行される。これにより、これまで外商投資企業に適用されていた外資三法(外資独資企業法、中外合資企業法、中外合作企業法)は廃止され、会社法に基づく組織体制の構築が必要になる。

既存の外商投資企業、特に中外合弁会社は会社法に基づく組織体制への変更による影響を大きく受ける。従来、最高意思決定機関を董事会とし、定款変更や増資などの重要事項の決定は董事会の全員一致を必要としていたが、会社法の適用によって、最高意思決定機関が株主会となり、3分の2以上の賛成で決定される特別決議事項となる。少数株主が重要事項の決定に拒否権を持っていた状況から変わるわけだ。当事者が合意した際にどのような意思を持っていたかという「当事者の合理的意思」に立ち返り、組織体制・ガバナンス変更の交渉を重ねる必要がある。

既存企業に対する組織形態などの変更期限は2024年12月31日まで猶予されており、期限までに変更しなかった企業は2025年1月1日から6カ月以内に変更が必要となる。それでも変更しないと、登記処理・企業情報公示システムの利用が中止される。実質的には外商投資法施行後5年半の猶予期間があることになるが、石本氏は「早めに組織体制・ガバナンスの変更の検討を開始しておくことが望ましい」と話した。

貿易摩擦などを背景に進む中国の投資環境改善

外商投資法は2018年後半から制定作業が加速し、同年12月末に草案を公表、意見募集を行った後、2019年3月15日に全国人民代表大会で可決された。米国との貿易摩擦などを背景に迅速に成立した。

外商投資の促進・奨励のほか、外商投資の保護、外商投資企業と内資企業を公平に取り扱うとする「内国民待遇」、技術譲渡の強制の禁止などが規定されている。技術譲渡強制の禁止については、米国通商代表部(USTR)の指摘(2018年3月報告書)を受け入れたかたちで、技術輸出入管理条例の第三者の権利を侵害した場合の責任義務や、改良技術が改良者に帰属するなどの規定が削除された。また、外商投資に対する外商投資参入特別管理措置(ネガティブリスト)が全面的に実行されるほか、外商投資情報報告制度や外商投資国家安全審査制度の管理措置を規定している。

今後、外商投資法をはじめとする各管理制度の詳細について、関連法令が整備されていく見通しだ。石本氏は「中国は確実に変化している一方、昔から変わらない部分もある。過去の情報にとらわれず、最新情報の収集に努めてほしい」と促した。

(清水絵里子)

(中国)

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