地方交付金の10%を農林水産事業に強制充当する法案提出

(フィリピン)

マニラ発

2019年12月10日

フィリピンで、国から地方政府に配分される交付金の10%を農林水産事業に強制的に充当することを規定する地方政府農業開発法案(上院第1138号)が上院で審議されている。

1991年制定の地方自治法に基づき、国の歳入の40%が地方政府に自動的に配分される交付金配分制度「内国歳入割当金制度(IRA)」が運用されているが、今回の地方政府農業開発法案は、地方自治法を改正し、IRAに基づいて配分される交付金のうち10%を当該地方の農林水産事業に強制的に充てさせることで、農林水産業に従事する地方住民を貧困から脱却させることを目的とする。

法案の序文で背景や目的に触れている。国内労働者の3分の1が農林水産業に従事する中、その多くは貧困状態にあるとし、地方政府が国からの交付金を農林水産業の生産性や品質、安全性の向上のための事業や基金に適切に充当できていないことが法案提出の背景とした。また、地方政府の農林水産担当部局が適切に交付金を利用しているかどうかを農業省が監理監督し、技術や人材育成、研究開発などの面で地方政府を支援することを規定している。

法案を提出したシンシア・ビリアール上院議員は、地方政府の担当部局の権力が肥大化し、農林水産業とは全く関係のない事業に交付金を使用することもあるとし、農業省の地方部局が地方政府の地方政府の担当部局を監理することで、農林水産業に従事する国民の所得を向上させると説明した。

フィリピンは2017年に6.7%、2018年に6.2%の経済成長率を記録し、鉱工業(2017年:7.2%、2018年:6.7%)とサービス業(2017年:6.7%、2018年:6.8%)も高い成長率をみせる一方で、農林水産業は2017年に3.9%、2018年に0.9%と、他の産業と比較して低い水準にとどまっている。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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