ADBがニート対策に4億ドル、2022年にニート率17%へ

(フィリピン)

マニラ発

2019年12月18日

アジア開発銀行(ADB)は12月3日、フィリピンにおいて就学・就労・職業訓練のいずれも行っていない、15歳から24歳までの若者〔以下、ニート(注)〕の割合を2022年までに17%まで減少させるためのプロジェクト費用として、4億ドルをフィリピン政府に貸し付けると発表した。12月3日付でフィリピン通信社ほか、地元各紙が報じた。

ADBによると、フィリピンにおけるニートの割合は2012年に25%だったのが、2017年には22%に低下したとされる。ただし、18%という東南アジアおよびオセアニア地域の平均に比べると高い。

この背景には、若年層の高い失業率がある。フィリピン統計庁(PSA)によると、2019年7月時点の国内の失業率は5.4%、不完全雇用率(基準労働時間数を下回り、より長く働くことを希望しかつ可能な状態の者の割合)は13.9%で、7月の失業率、不完全雇用率としては、ともに2005年以降で最も低い値になった(2019年9月18日記事参照)。

ただし、若年層(15~24歳)の失業率は14.4%と高く、国内の全失業者数243万2,000人のうち、若年層は110万6,000人と全体の45.5%を占めるなど、年齢が低いほど失業者数が多い状況だ。フィリピン政府は2019年4月、「初回求職者支援法(First-Time Jobseekers Assistance Act)」を制定し、大学を卒業したばかりの学生や、中学や高校を卒業したが、まだ一度も職に就いたことがない求職者を対象に、就職活動において提出を求められる各種政府発行の文書や資料の発行手続き費用を免除するなど、若年層の就職活動を支援しており、毎年130万人の求職者が同法の恩恵を受ける、と試算している。

ADBがフィリピン政府に貸し付ける4億ドルは、フィリピン労働雇用省(DOLE)による低所得層の家庭の若者向けのスキル開発プログラムや、雇用者と被雇用者のスキルのミスマッチを予防するためのプログラム、そして失業保険プログラムの財源としても利用される。

(注)日本では、「15~34歳の非労働力人口のうち通学・家事を行っていない者」を指すが、ここでのニートは、ADBが定義する「15~24歳の非労働力人口のうち通学・家事を行っていない者」を指す。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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