知財紛争の仲裁サービス強化、紛争解決短期化を図る

(フィリピン)

マニラ発

2019年12月03日

フィリピン知的財産局(IPOPHL)は11月26日、知的財産権をめぐる紛争の際の仲裁サービスを強化すると発表した。11月27日付の地元各紙が報じた。

IPOPHLは、数年の歳月がかかる知的財産権をめぐる訴訟は企業にとってもコスト面でも負担が大きく、仲裁手続きによって早い場合は1年以内に企業は紛争を解決できるとした。仲裁サービスの強化により、知的財産権をめぐる紛争の未処理案件が昨今増加している裁判所にとっても、その処理スピードが加速できると見込まれている。IPOPHLのジョセフィン・サンティアゴ局長は、技術革新や模倣品の流通増加に合わせて知的財産権をめぐる紛争も増加傾向にあり、公開の場で実施される訴訟よりも非公開の仲裁手続きを好む企業が増加しているとした。

フィリピンでは近年、模倣品の流通が増加しており、大規模な摘発を行った2014年に133億ペソ(約279億円、1ペソ=約2.1円)相当の摘発実績を上げた。2015年には20億ペソに減少したものの、2016年(65億ペソ)、2017年(82億ペソ)、2018年(236億ペソ)と、再び増加傾向にある。また、IPOPHLは2019年10月、国内の大手電子商取引(EC)事業者に対して、ECサイトでの模倣品販売が増加しているとして、その防止に向けて対策を強化するよう指示を出した。

なお、IPOPHLは2018年、知的財産権侵害に対する行政事件については、裁判外紛争解決制度(ADR)としての調停に強制的に付されなければならないとした。IPOPHLに対して提起された行政事件についてのみ妥当するもので、他の機関が管轄を有する事件においては適用されない。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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