市民権法改正めぐりインド各地で抗議活動、デリーでは交通規制も

(インド)

ニューデリー発

2019年12月26日

インド各地で市民権法の改正をめぐる、抗議活動が発生している。今回の改正は、2014年12月31日以前にインドへ入国したアフガニスタンとバングラデシュ、パキスタンからのヒンドゥー教徒、シク教徒、仏教徒、ジャイナ教徒、ゾロアスター教徒、キリスト教徒の難民にインドの市民権を認めるというもの。12月11日に下院を通過し、翌12日に公布された。

インド北東部に位置するアッサム州では、バングラデシュから難民として逃れてきたヒンドゥー教徒が多くいることから(注)、彼らに市民権を与えることでアッサムの人々の雇用や独自の文化が脅かされるとして、12月上旬から抗議活動が発生。同月16日には安倍晋三首相が同地を訪問してモディ首相と首脳会談を行う予定だったが、治安を考慮して延期となった。

首都ニューデリーでは、今回の改正がイスラム教徒難民への市民権を認めないことから、政教分離の原則に反するとして、学生を中心に抗議活動が発生。12月19日にはデリー北部で予定された大規模な抗議活動の規制を目的に、警察がデリーとグルガオン間の主要道路にバリケードを置いて交通を抑制し、大規模な渋滞が発生した。現地報道によると、同日はデリー北東部のメトロ20駅が封鎖され、通信規制も実施されたという(12月20日付「タイムズ・オブ・インディア」紙など)。

政府はフェイスブックやツイッターにコメントや解説ビデオをアップロードするなど、SNSを活用して市民権改正への理解を呼び掛けている。

(注)バングラデシュでは人口の約9割がイスラム教徒とされているが、約1割がヒンドゥー教徒。

(磯崎静香)

(インド)

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