新たな特許制度「原授標準専利制度」が開始、実体審査を初導入

(香港)

香港発

2019年12月23日

香港特別行政区政府(以下、「香港政府」)は、新たな特許(専利)制度の「原授標準専利制度〔original grant patent(OGP)system〕」に基づく特許出願の受け付けを12月19日から開始した。

新制度の最大のポイントは、香港の知財当局である香港知識産権署による実体審査(新規性・進歩性・明細書記載要件などの審査)を初めて導入したことだ。

従前の特許制度「標準専利制度」(権利期間:指定知財当局への出願から20年)は、まず指定知財当局〔中国国家知識産権局、英国知的財産庁、欧州特許庁(英国を指定国とする)〕のいずれかに特許出願を行った後に香港で出願(記録請求)し、指定知財当局で登録された後、その結果に基づいて香港で付与請求を行うことで香港での特許権が付与される制度だ。また、日本の実用新案制度に該当する「短期専利制度」(権利期間:出願から8年)は、香港知識産権署に直接出願できるが、こちらも実体審査は行われず、方式審査のみで登録される。

新制度の導入後も、従前の「標準専利制度」と「短期専利制度」は存続する。出願人にとっては、他の知財当局への手続きを行うことなく直接出願によって長期間の権利期間を得られる選択肢が増える。標準専利の出願件数は2018年に約1万6,000件だったが、新制度の出願件数は初年度で約100~200件程度と見込まれている。

林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は12月5日に香港で開催されたBusiness of Intellectual Property Asiaフォーラムで、新制度の導入によりイノベーションや知財取引のハブとしての香港の長期的な発展が可能となることを確信していると表明した。

新制度は2011年から検討が進められ、2016年に「2016年専利(修訂)条例」が成立、2019年には「2019年専利(一般)(修訂)規則」が成立していた。2013年に締結された香港知識産権署と中国国家知識産権局の専利領域における「協力計画」で、新制度の導入に当たり、中国国家知識産権局が特許の実体審査や研修などの分野で支援を行うことが表明されていた。

(松本要)

(香港)

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