インド準備銀、1年ぶりに政策金利を据え置き

(インド)

ムンバイ発

2019年12月17日

インド準備銀行(RBI、中央銀行)は12月5日、金融政策決定会合(MPC)を開催し、政策金利(レポレート)を5.15%に据え置くことを決定した。金融スタンスは引き続き「緩和的(accommodative)」を維持したが、金利の据え置きは6会合(約1年)ぶり。景気回復を促進するため、ほぼ全てのエコノミストやマスコミがさらなる利下げを予想していた中での今回の据え置き決定は、市場で驚きをもって受け止められている。また、2019年度(2019年4月~2020年3月)のGDP成長率の見通しも6.1%から5.0%に下方修正された。なお、今回の決定は全会一致だった。

RBIのレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは「MPCは将来的なアクションに対する金融政策の余地(=利下げ)を認識しているが、インフレの動向に鑑みれば、いったん(利下げを)保留すべきと考えた」と述べている。一方で、「インフレ率が目標値に収まっているうちは、成長回復のために必要とされる限り、『緩和的』なスタンスを保持し続ける」と強調している。

事前の予想に反した今回の据え置き決定の要因としては、RBIのインフレ率目標(4%±2%)に対して、特に長雨の影響で著しく上昇した野菜価格など、足元の消費者物価指数(CPI)が目標の範囲内とはいえ想定以上に上昇していることが挙げられた。これに伴い、2019年度下半期(2019年10月~2020年3月)のCPI平均上昇率も前回10月時点の予測値3.5%~3.7%から、今回4.7%~5.1%に引き上げられた。

なお、同レポートでは、継続的な景気減速と実体経済における需給ギャップに言及しているが、2020年度上半期(2020年4~9月)にはCPI上昇率が3.8%~4.0%になると予測している。この予測の背景には、2019年2月以降の政府とRBIによる金融政策の効果が徐々に浸透しつつある点を要因として挙げている。しかし、12月10日にインド自動車工業会(SIAM)が発表した11月の国内新車販売台数は前年同月比で減少して、13カ月連続の減少となっており、インド経済の回復には時間がかかる見込みだ。

(比佐建二郎)

(インド)

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