世界経済の冷え込み受け、2020年のGDP成長率を1.1%と予測

(オーストリア)

ウィーン発

2019年12月25日

オーストリア国立銀行(中央銀行)は12月13日、2020年の実質GDP成長率を1.1%、2021年は1.5%とする経済予測を発表し、前回予測(6月)から2020年は0.5ポイント、2021年は0.1ポイントそれぞれ下方修正した(表参照)。世界経済が冷え込むにつれて、オーストリア経済も大幅に減速するとみている。特に輸出主導の産業部門への影響が大きく、製造業は2019年後半から景気後退期に入っているとするが、依然として堅調な個人消費と好調な建設投資により、深刻な落ち込みは回避されるという。

輸出主導の産業落ち込む

2019年に入って、2015年から続いた好景気にブレーキがかかった。外需が弱まったため、輸出の拡大は前年(5.9%)より大幅に減速(3.1%)、2020年は1.7%にとどまるとみられる。企業の設備投資も勢いを失っており、2020年にはわずか0.3%増にとどまる。その後、世界貿易の回復に伴い、2022年には伸び率が1.5%に上昇する見通しだ。

2018年の被雇用者数は前年比2.2%増を記録したが、2019年には雇用拡大も減速する見通し。景気の変動に敏感な派遣労働者の新規雇用は第3四半期(7~9月)に頭打ちとなった。被雇用者数の増加は2019年には1.5%、2020年には0.9%にとどまる。2016年の6.0%から2018年は4.8%に低下した失業率は、2019年にはさらに4.6%に低下するが、2020年は4.7%と若干上昇する見込みだ。

長引く連立交渉

このような景気悪化の兆候が出る中、国内政治は混沌(こんとん)としている。中道右派の国民党が37.5%と得票率を大幅に伸ばした議会選挙から3カ月近くが経ったが、新政権はいまだ発足していない。国民党は11月15日から緑の党との連立交渉に入ったが、移民問題や税制改革、気候変動対策、行政の透明性などの課題で立場が大幅に違うため、両党が合意する政府プログラム策定が難航しており、交渉内容はまだ何も公表されていない。クルツ国民党党首は「クリエ」紙に2020年1月に組閣できると述べたが、緑の党側は組閣を急ぐ国民党に不快感を示しており、今のところ、連立政権が成立するかどうかでさえ確実ではない。得票率からすれば、国民党と社民党、国民党と自由党という組み合わせの連立政権もあり得る。次期政権の組み合わせも基本方針も未確定だ。

表 2019~2022年の経済予測

(エッカート・デアシュミット)

(オーストリア)

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