日中国際協力産業園、日系企業の声を踏まえて建設進める意向
(中国)
北京発
2019年12月26日
北京市第2の国際空港として北京大興国際空港が9月25日に開業したことを受け、12月10日に在中国日系企業の団体である中国日本商会の調査委員会が視察団を組織し、同空港とその周辺で開発が行われている「日中国際協力産業園」を視察した。以下、同産業園の計画概況や進捗状況について報告する。
日中国際協力産業園は、北京市大興区政府と北京市経済技術開発区などが計画・実施しているプロジェクトで、起歩区(スタートエリア)、核心区(核心エリア)、拓展区(エクステンドエリア)などから構成されている。その中で比較的整備が進んでいる起歩区のうち中科電商谷(ECバレー)と医療機器産業園を視察した。
中科電商谷は北京大興国際空港から28キロの距離に位置し、北京市で最初に承認された越境EC産業園区で、2期に分けて整備が進められている。第1期区画には日系企業2社を含む約300社が入居しているほか、インキュベーション施設、ECなど新メディア分野の人材などに対して専門的な職業訓練を行う研修センター、日本や韓国などから輸入した保税商品を並べた体験店などがある。第2期区画は今後、企業の誘致・入居を進める予定となっている。地区の担当者は、今後1~2年でホテルやレストラン、ショッピングモール、駐在員用マンションなど周辺環境の整備が進むとした上で、大興区や雄安新区などの南部に向けて発展していく北京市政府の方針に従い、北京の国際的な交流窓口の1つになると展望した。
医療機器産業園には先端的な医療機器の研究開発、生産、販売などを行う企業が集積し、同仁堂など製薬企業が拠点を置いているほか、小中一貫の9年制学校などの教育機関や住宅の整備も進められている。同園区では、手術時に出血がないメス、牛の骨を用いて製造したアレルギー反応の出ない人工骨、米国から輸入していた動脈ステントの国産化などのプロジェクトが行われている。
そのほか、大興空港に隣接する地域を臨空経済区として開発し、海南省などの自由貿易試験区や中関村で適用されている優遇策を享受できるようになるとの説明があった(注)。
大興区政府当局者は、日中国際協力産業園を日本企業にとって最適化されたビジネス環境と快適な生活環境を提供する地域にしていくとした上で、日本企業のニーズを聴取しながら具体的な政策を決定していきたいとの意向を示した。今後、同産業園区で日系企業の誘致・集積が進むか注目される。
(注)臨空経済区は「中国(河北)自由貿易試験区」に指定された地域。「北京大興国際空港臨空経済区総体規画(2019~2035年)」によると、国際交流センター機能区、国家航空科学技術イノベーション推進区、京津冀(北京市・天津市・河北省)地域共同発展モデル区として位置付けられ、総合サービスや科学技術イノベーション、航空物流などを重点的に発展させる方針(「新華網」2019年10月25日)。
(趙薇)
(中国)
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