スタートアップVCV、人材選考システムで日本に参入

(ロシア)

モスクワ発

2019年12月13日

スタートアップ海外展開支援イベント「ロシア・スタートアップス・ゴー・グローバル」が11月29日にモスクワで開催され、人材採用自動化プログラムを開発するVCVのアリク・アフベルジャン最高経営責任者(CEO)が日本に進出した背景や経験を紹介した。

同社は2013年にロシアで設立され、ボット(注)を使って履歴書のチェックと候補者の絞り込みから面接日程の調整まで行い、ビデオ面接を通して候補者の分析・選考を行うシステムを開発している。ロシアでは、検索大手のヤンデックスやメール・ル、外資系大企業などを顧客としている。

2017年に米国サンフランシスコでのアクセラレーション・プログラム「500スタートアップス」に参加し、多くの投資家と会ったが、投資が受けられず、米国市場参入の糸口を見つけられなかった(なお、同年に米国法人設立)。同社は、アジア市場にも関心を示していたところ、日本のウィルグループの投資家にめぐり合い、日本市場に照準を合わせた。アフベルジャンCEOによると、日本企業が大学新卒者を毎年、一括採用するため採用に数百万ドルを費やすことに着目、日本市場は大きなチャンスがあると判断し、2018年に参入を決めたという。ウィルグループからも投資を受け、2019年4月、東京に米国法人の100%子会社を設立した。同社の投資家や顧問として、ほかに「500スタートアップス」、ロシアのモスクワ・マネジメント・スクール・スコルコボなどの幹部が名を連ねる。

最初に日本人の営業担当者を雇用し、プログラムの日本語訳に着手した。営業には、特定のテーマで集まるコミュニティ、いわゆるミートアップの機会を活用した。大企業の人事担当者向けに毎月、ミートアップを行い、初回で早速、顧客を見つけたという。営業にはSNSや、Eメール検索・収集サービス、返事がない相手に対して自動的にメールを送るサービスなどを駆使して企業にコンタクトした。

参入後半年で、複数の大企業クライアントを獲得できたという。しかし、日本企業とは交渉に約4カ月、契約書の署名に1カ月半~2カ月を要し、ビジネスのスピードは米国よりも遅く、日本では全てに時間がかかると留意点を述べた。聴衆のロシアのスタートアップ関係者に対し、「日本人は英語のメールは読まずに捨てるため、日本語でメールを送ること」「名刺も日本語で、渡すときは両手で」「相手は名字で呼ぶこと」「日本企業は関心がない時は回答があいまいになるため、はっきりした回答を追求する必要はない」とアドバイスを送った。

(注)タスクを自動的に実行するアプリケーションやプログラム。

(エカテリーナ・セミョノワ)

(ロシア)

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