世界12位の投資環境を再評価、東京で大型セミナー

(マレーシア)

アジア大洋州課

2019年12月10日

マレーシア投資開発庁(MIDA)のアズマン・マフムド長官は12月4日、東京都内で開催されたセミナーに登壇し、同国の強みである電気・電子産業のほか、航空部品・MRO(注1)や製薬、ハラールなどの産業分野でビジネス機会があるとして、日本企業に投資やマレーシア企業との共同ビジネスを呼び掛けた。

今回のセミナーはダレル・レイキン国際貿易産業相の来日に合わせて実施され、MIDAなどが主催し、ジェトロも共催に加わった。日本企業の関係者など約500人が参加した。アズマン長官のほか、マレーシア貿易開発公社(MATRADE)のワン・ラティフ・ワン・ムサ長官と日本企業の登壇者を交え、議論が行われた。

写真 パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

デジタルに強い人材を育成

ジェトロの北川浩伸理事は、日本からマレーシアへの直接投資フローが2016年から減少し、2018年には1,000億円を下回るなど、ASEAN主要国では低い水準にあることに触れ、「ASEAN内におけるマレーシアの相対的な競争優位性は何か」と問題提起した。

三井住友銀行グローバル・アドバイザリー部の保坂宏一部長は「世界銀行が10月に発表した「Doing BusinessPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」(注2)の世界ランキングで、マレーシアは190カ国・地域中12位に躍進している。日本(29位)より上位」とした上で、高い労働コストをカバーする充実したインフラを評価した。また、1人当たりGDPは1万ドルを超え、クアラルンプールに限れば3万ドル超と高付加価値製品への受容が高く、サービス業の外資規制が比較的少ない点も強みだとした。

2015年からマレーシア工場を操業している電子楽器メーカーのローランド(本社:浜松市)の三木純一社長も、「初めての海外工場を設置する上で、政治的安定性と自然災害の少なさ、インフラ整備状況、電子部品サプライヤーの豊富さが決め手だった」と語った。特に、タイなどに比べて小ロット対応が可能な部品サプライヤーが多い点を好感しているという。同社では現在、物流インフラが整ったマレーシアをハブ倉庫としても活用しており、中国や台湾で調達した製品もいったんマレーシアに集約している。

ローランドは、マレーシア政府のプログラムで日本へ留学したマレーシア人を幹部候補生として採用しており、「政府のサポートも手厚い」(三木社長)と言う。MATRADEのワン・ラティフ・ワン・ムサ長官は「2020年予算では、デジタル分野や情報教育などに重点を置いている」とし、インダストリー4.0をはじめ、デジタル分野に対応できる人材を育成していく考えを示した。

(注1)航空機の整備・補修・オーバーホールのこと。

(注2)世界190カ国・地域を対象に、事業開始の容易さなどビジネス環境に関する10分野を指標化・順位付けした調査。

(北見創)

(マレーシア)

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