スリランカで新内閣発足、大統領の兄弟2人が入閣、少数派タミルからは2人任命

(スリランカ)

アジア大洋州課

2019年12月09日

スリランカでは、11月22日に首相以外の計15人の閣僚が組閣され、新内閣が発足した(表参照)。11月16日に実施された大統領選挙で大統領に選出されたゴダバヤ・ラージャパクサ氏は、21日に兄のマヒンダ元大統領を首相に任命し、スリランカ史上初の大統領と首相が兄弟という政権が発足している(2019年11月28日記事参照)。新内閣では、マヒンダ首相が、財務・経済開発相のほか2つの閣僚を兼任、その他の大統領の兄弟では兄のチャマル氏が国内交易・食糧安全保障・消費者福祉相ほか1つの閣僚を兼任するかたちで入閣しており、ラージャパクサ一族による権力支配の復活が懸念される。

首相を含めた計16人からなる新内閣には、国内少数派のイスラム教からの選出はなかったが、同じく少数派のタミル人からは、アルムガン・トンダマン氏とグラス・デェーワーナンダ氏の2人の閣僚が任命されている。ただし、11月27日までに任命された内閣以外の38人の大臣の中には、タミル人やイスラム系のメンバーは選出されなかった。また、計54人の閣僚・大臣のうち、女性は内閣に入閣したパヴィスラ・デヴィ・ワニアラッチ氏のみだった。

現内閣は2020年3月以降の総選挙まで布陣を保つ前提での任命としているが(2019年11月28日記事参照)、スリランカの国会では現在、前政権の与党で、今回の大統領選挙の対立候補だったサジット・プレマダーサ氏の所属するスリランカ統一国民党(UNP)が第1党であるため、ゴダバヤ・ラージャパクサ大統領は早期に国会選挙を実施したい意向を表明している。

マヒンダ氏は大統領時代、一族による権力支配、中国との蜜月や汚職が要因となり、前回2015年の大統領選に敗北している。ゴダバヤ氏は、外交面では大統領就任後の初外遊にインドを選び、11月29日にモディ首相と面談するなど、こうした批判に配慮した政権運営を実行しているが、内政面において、一族支配に対するガバナンスが機能するか、注目が集まる。

表 新内閣一覧

(三木貴博)

(スリランカ)

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