スリランカ大統領選でラージャパクサ氏が勝利、首相と兄弟の政権に

(スリランカ)

コロンボ発

2019年11月28日

スリランカで11月16日、大統領選挙が行われた。全ての開票は17日午後までに終了し、約1,200万の有効票のうち過半数52%を獲得したスリランカ人民党(SLPP)のゴタバヤ・ラージャパクサ氏が当選した。

今回の大統領選の争点の1つが、2019年4月に発生したテロ後の国家治安の回復だった(2019年10月31日記事参照)。コタバヤ・ラージャパクサ氏は自身の国防長官としての実績、そして2009年に内戦を終結させた兄マヒンダ・ラージャパクサ前大統領の後光を借りるかたちで強いリーダー像を形成し、結果として、人口の75%を占めるシンハラ人から絶大な支持を得て勝利した。

今回の選挙でゴダバヤ氏の有力な対抗馬とされていた、スリランカ統一国民党(UNP)のサジット・プレマダーサ氏の得票率は42%だった。ゴタバヤ・ラージャパクサ新大統領は、11月21日に公約どおり、兄マヒンダ氏を首相に任命し、スリランカ史上初の大統領と首相が兄弟という政権が発足した。前連立政権では、大統領と首相が異なる政党に所属することから政策の方向性に隔たりがあり、自由貿易協定(FTA)の通商政策においても、政府が一枚岩でないことが露呈したことなどが重なり、2018年10月の首相解任劇につながった(2018年10月29日記事参照)。今回、ラージャパクサ兄弟による足並みがそろった政権運営により、大型のインフラプロジェクトなどが前に進みやすくなるのではないかとみるビジネス関係者もいる。

マヒンダ・ラージャパクサ新首相は11月27日までに、2020年3月以降の総選挙まで布陣を保つ前提で、総勢54人の新たな大臣、国務大臣を任命した。マヒンダ氏は前大統領時代、中国との蜜月や汚職が一因となり、前回2015年の大統領選に敗北した経緯から、中国一辺倒でない全方位的な関係構築に留意していく可能性がある。

ゴタバヤ・ラージャパクサ大統領とマヒンダ・ラージャパクサ首相は今後、対外債務の処理とその抑制、財政赤字の削減、輸出拡大による貿易赤字の削減と国際収支の改善など、国が抱える経済的な課題と向き合うこととなる。IMFからは引き続き、マクロ経済ファンダメンタルズの安定化を求められている。新大統領は選挙キャンペーン期間中に、財源を半ば無視した付加価値税や一部所得区分向け所得税率の軽減などをマニフェストとして国民に訴えた。今後は、国民の支持を持続させながら、適切な経済政策によって、外国投資家の信頼の獲得、輸出拡大のための企業誘致など推し進めていくことを迫られる。

(ラクナ・ワーサラゲ、糸長真知)

(スリランカ)

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