上院議員がインフラ開発計画の遅延を非難、大統領任期中の執行完了は不可能か

(フィリピン)

マニラ発

2019年11月22日

フィリピン労働雇用省の元長官で上院議員のフランクリン・ドリロン氏は11月12日の上院本会議で、ドゥテルテ政権の経済政策の中核である大規模インフラ整備計画「ビルド・ビルド・ビルド」が大幅に遅れていると非難した。11月12日付の地元各紙が報じた。

ドリロン上院議員は、この整備計画で中核とされている75のプロジェクトのうち、現時点で建設が完了したのは2つ、建設中は9つにすぎないと指摘し、「ドゥテルテ大統領の任期である2022年6月まで残り2年半なのに、予算の執行が極めて遅い」と非難した。

国家経済開発庁(NEDA)は、2020年中に12、2021年に5、2022年に26の合計43のインフラプロジェクトが大統領任期までに完了すると説明しているが、ドリロン議員は「政権発足から3年半が過ぎた現時点で2つしか完了していない。残り2年半でどうやって43ものプロジェクトを完了させるのか」とただした。

ドリロン議員はさらに、予算執行能力が最も低い省庁として運輸省と公共事業道路省を名指しで非難した。フィリピン政府監査委員会の最新の報告書によると、2017年度の両省の予算執行率は運輸省が26%、公共事業道路省は33%だった。

インフラの未整備については、日本企業もフィリピン投資に当たってのリスク要因の1つとして認識しており、ジェトロが実施した「2018年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」では、61.8%の在フィリピン日系企業が投資環境上のリスクとしてインフラの未整備を挙げた。

世界経済フォーラム(WEF)は10月、世界141カ国・地域の国際競争力をランキングした「2019年世界競争力レポート」で、フィリピンのインフラを96位と低く評価。インフラの中でも「道路の接続性」(125位)、「航空サービスの効率性」(96位)、「鉄道の混雑」(91位)といった点を特に低く評価した(2019年10月23日記事参照)。アジア開発銀行(ADB)も9月、アジアの278都市の中でマニラ首都圏を最も交通渋滞が深刻な都市に選定している(2019年10月3日記事参照)。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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