稼働の遅れでコスト増大の新型原発、報告書が対策を提言

(フランス)

パリ発

2019年11月12日

フランス北西部のフラマンビル原子力発電所に建設中の、新型原発(欧州加圧水型炉、以下EPR)の稼働が当初の計画から10年以上遅れる問題で、原因究明と改善策に関わる報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(通称:フォルツ報告書)が10月28日、フランス電力(EDF)と同社の筆頭株主であるフランス政府に提出外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされた。フランス電力の要請で、自動車のグループPSAのジャン=マルタン・フォルツ元会長がまとめた。

2012年6月の運転開始に向け、2007年12月に着工したEPRは、原子炉圧力容器に関わる鋼材の組成異常や配管溶接部の欠陥など、複数の問題が見つかったことから建設が遅れ、2019年10月の計画では、運転開始に向けた燃料装填(そうてん)が2022年末、運転開始は2023年以降になる見通し。これに伴い建設総額も、当初予測の33億ユーロから124億ユーロに膨らむ。

フォルツ報告書は、遅延とコスト増大の主な原因として、セキュリティーや資材の品質などに関わる詳細な事前調査が不足していたこと、複数の企業が混在する現場を統括し監督する権限を持ったプロジェクトマネジャーやプロジェクトチームの設置が遅れたこと、原発圧力容器の品質、耐久性、溶接プロセスなどに関わる規制強化で新たな試行や修理を迫られたこと、などを挙げた。

また、フラマンビル原発の着工以前、フランスでの新規原発着工は1991年のシボー原発2号機を最後に16年間なく、その間にフランス電力のプロジェクトマネジメント能力や部品メーカーの製造能力が低下し、特に溶接の技術や人材を喪失したと指摘した。

一方でフォルツ報告書は、中国・台山原発で稼働し良好に機能しているEPRを例に挙げ、EPRのコンセプトに抜本的な修正を加えるのを避け、フランス国内のEPR建設でこれまでに蓄積した経験・ノウハウを維持すべきだとした。その上で、原子力発電産業の能力の再構築と維持に向け、新たな原子炉の建設と既存の原子炉を維持するための長期的計画の策定が必要になると結んだ。フォルツ報告書を受け、ブリュノ・ルメール経済・財務相はフランス電力に対し、1カ月以内に原子力発電産業の立て直しに向けた行動計画を提出するよう求めた。

フラマンビル原発の稼働延期を受け、マクロン大統領がフランス電力に2021年での提出を求めていたEPRの国内新設計画も先送りされる見通しだ。エリザベット・ボルヌ連帯・エコロジー転換相は10月28日、EPR新設の決定はフラマンビル原発の稼働後になる、とした。

(山崎あき)

(フランス)

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