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EU理事会、消費者代表訴訟指令案に合意

(EU)

ブリュッセル発

2019年11月29日

EU理事会(閣僚理事会)は11月28日、EUとして法制化を進めている「消費者の集団的利益保護のための代表訴訟指令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」案について、EU加盟国閣僚レベルで合意に達したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。EU理事会は域内での消費者代表訴訟を念頭に置くこの指令について、今後、欧州議会と協議を進めて早期可決を目指すが、指令が採択されても、その発効後、加盟各国には30カ月の国内法制化期限(適用開始は同期限のさらに12カ月後)が設定されているため、直ちに運用が開始されるわけではない。しかし、ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は同日の声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、消費者へ真の補償をもたらす提案内容なのか懸念があると指摘、警戒感を示している。

賠償報酬目的の訴訟横行リスクを欧州産業界は懸念

指令案は、EU法違反に伴う被害から消費者の集団的利益を保護するための代表訴訟(集団訴訟)に道を開き、違法行為の差し止め命令と消費者の救済を可能にするシステムを導入するため、欧州委員会が2018年4月に提案していた。2019年下期のEU議長国を務めるフィンランドのティモ・ハラッカ雇用相は「(EU加盟国間で)合意した指令案は消費者にその権利保護のための効果的な措置をもたらすと同時に、その乱用的訴訟から事業者を守る」とコメントしている。

指令案によると、被害者救済のための集団訴訟は、消費者団体などEU加盟国で認定された「適格団体(qualified entities)」に権限を付与するもので、被害に対する賠償や回復を目指すことになる。「適格団体」は一定の認定基準(非営利目的・EU法の順守を確保する正当な利益を有していること)を満たす必要があり、当該適格団体は訴訟を進めるための財務能力や財源についての情報を裁判所または⾏政当局に開⽰することを求められる。

また、被害消費者やその代理人弁護士など訴訟当事者以外の第三者が訴訟(仲裁)費用の提供を申し出、訴訟の組織化を図る、いわゆる「訴訟ファンド」などの問題に対応するため、指令案は、こうした資金提供を行う第三者による「代表訴訟(仲裁を含む)に関連して、適格団体の意思決定に対する影響⼒の行使」と「当該第三者が被告(企業など)と競合もしくは依存の関係にある場合、当該被告に対する代表訴訟に資金提供する行為」を禁止している。

ビジネスヨーロッパも、消費者の被害に対する賠償や回復、そのための法制度整備については支持する姿勢だが、11月27日付で「EUの消費者集団訴訟制度は消費者(の権利保護)のためにあるべきで、法律事務所や(訴訟)ファンドのためのものではない」とする声明を出した。ビジネスヨーロッパのマルクス・バイラー事務総長はEUに対して、「消費者に賠償の機会を認めると同時に、しばしば第三者訴訟ファンドが引き起こす『日和見訴訟(opportunistic litigation)』を排除する制度を目指すべき」と提唱。訴訟ファンドが横行する他の地域では、裁判所が訴訟を却下した場合に資金提供者が高額の報酬を受け取ることがあり、「低リスク・高リターン投資」としてヘッジファンドが参入する事例さえ存在するなどの問題を指摘した。

ビジネスヨーロッパは、指令案の施行によって、こうした営利目的で訴訟資金を提供する第三者ファンドが上記規制の範囲内ではあるが、事実上、EU域内で活動を開始する契機になるとみており、「(欧州の)伝統的な弁護人・依頼者の関係に、利益に貪欲な部外者が介入することを招き」「『日和見訴訟』と訴訟の不当な長期化につながる」と警戒感をあらわにしている。また、現時点では営利目的で訴訟資金を提供する第三者ファンドの活動を規制する法令を持つEU加盟国は1カ国しかないとして、EU域内での訴訟ファンドの横行を阻止できないリスクも指摘している。

(前田篤穂)

(EU)

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