カザフスタン製ユーロコプター、近隣諸国への輸出が始まる

(カザフスタン)

タシケント発

2019年11月07日

国有企業のカザフスタンエンジニアリングと、エアバスの子会社ユーロコプターとの合弁企業「ユーロコプター・カザフスタンエンジニアリングLLP(注)」は10月28日、同社が組み立てたH125ヘリコプターを発注元のタジキスタンのソモン航空に引き渡した。

ユーロコプター・カザフスタンエンジニアリングLLPは、2012年に設立された。CISおよび中央アジアで唯一、エアバスヘリコプターの組み立てと販売を行い、修理・メンテナンスサービス、パイロットと整備士の育成も行う。エアバスから同社に出向している専門家のステファン・ユング氏によれば、技術移転と現地化は順調に進んでおり、当初8人いたエアバスの外国人技術者は年々帰国し、現在はユング氏1人のみだという。ヘリコプターの組み立ては年10機ペース(メンテナンスは年15~20機)で行っており、これまでは国内注文に対応していた。同社では、今回引き渡したH125のほかにH130、EC145の組み立ても行っている。

H125ヘリコプターは、機動性が高く視認性に優れ、高高度、高温の環境下でも能力を発揮できる機種で、人員・物資の輸送、遊覧飛行、災害救助に適している。2005年にはエベレスト山頂に着陸、航空機として最も高い場所での離着陸世界記録を樹立している。ヌルスルタン市で行われた引き渡しの記念式典に参加した、ソモン航空の代表者は、購入を決めた理由として、エアバスの品質と性能のみならず、近隣での修理メンテナンスが可能なことを挙げている。

カザフスタン政府も、タジキスタンに駐在事務所を開設した輸出保険公社カザフエクスポートを通じて、ソモン航空に低金利ローンを提供するなど、国内航空産業育成と地域における市場拡大を図るため輸出を後押ししている。

カザフスタンエンジニアリングのクアヌシ・ビシモフ会長によれば、現在、タジキスタンからの追加受注の計画のほか、キルギス政府からも引き合いがある。また、ロシア、キルギス、モンゴルからは修理やメンテナンスの依頼を受けているという。

(注)LLP(有限責任事業組合)には、事業経営で得た利益の配分を、出資比率にかかわりなく、組合員の能力、技術、特質などに応じて独自に決めることができることや、事業破綻しても出資者は出資額分だけ債務を負うなどの特徴がある。

(増島繁延)

(カザフスタン)

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