米ギャラップ、トランプ政権下の貿易に関する世論調査報告書を発表
(米国)
米州課
2019年11月06日
米国の調査会社ギャラップは10月25日、トランプ政権下での貿易に関する世論調査結果をまとめた報告書を発表した。貿易一般や米中貿易摩擦、北米自由貿易協定(NAFTA)などの個別の通商課題について、同社がこれまで行った各種世論調査の結果がまとめられている。
米国民は経済への貿易の影響に総じて肯定的
貿易一般に関して、2019年2月の世論調査(注1)では、「外国との貿易を輸出の増加を通した経済成長の機会とみるか、または輸入の増加による経済への脅威とみるか」という質問に対し、「経済成長の機会」が74%と、「経済への脅威」の21%を大きく上回った。経済成長の機会と回答した割合は、1992年の調査以降で最も高くなり、ギャラップは、米国民の貿易に対する見方は米国経済の景気動向に沿うかたちで変動すると分析している。支持政党別にみても、共和党支持者、民主党支持者ともに7割以上が貿易を経済成長の機会と捉えている。ただし、各党の支持者で貿易支持の理由は異なるとし、共和党支持者はトランプ大統領が通商協定をより良いものに見直すことに自信を示す一方で、民主党支持者はNAFTAや環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)協定に強硬姿勢を示すトランプ大統領に対抗する手段として貿易に好意的な意見を持っていることが、そうした結果に反映されたと考察している。
また、2月の別の調査(注2)では、他国との貿易が経済の各分野に与える影響について聞いたところ、いずれの項目でも肯定的な回答が過半となり、最も意見の分かれた「米国人労働者の雇用」に対しても、「主に肯定的な影響を与える」(51%)が「主に否定的な影響を与える」(42%)を上回った。総じて、米国民は貿易が経済にとって有益だと考えていることがわかる(図1参照)。
米国民は米中貿易摩擦の効果に懐疑的
米中貿易摩擦に関しては、2018年7月の調査結果(注3)を引用し、米国民の熱心な支持は乏しいと結論付けている。同調査では、米中両国が互いに掛け合う追加関税が(1)米国経済、(2)自分の家族の経済状況、(3)自分の雇用主の経済状況のそれぞれに与える長期的な影響について質問した。その結果、米国経済を追加関税が「改善させる」と回答した割合は31%にとどまる一方で、「悪化させる」は45%に上った(図2参照)。自分の家族の経済状況、自分の雇用主の経済状況については、ともに悪化(約3割)が改善(約2割)を上回ったが、「大きな違いは生まない」が4割超で最も大きかった。
NAFTAをめぐる世論に関しては、NAFTAは米国にとって「良い」と回答した割合は、2004年に民主党支持者と共和党支持者でほぼ同じ(39%、40%)だったが、2017年にはその差が大きく拡大した(67%、22%)という調査結果を示し、「NAFTAに対する態度は貿易をめぐる党派対立の代表例だ」としている。
(注1)調査の実施時期は2019年2月1~10日、対象者は全米の成人1,016人。
(注2)調査の実施時期は2019年2月12~28日、対象者は全米の成人1,932人。
(注3)調査の実施時期は2018年7月16~22日、対象者は全米の成人1,513人。
(甲斐野裕之)
(米国)
ビジネス短信 b7168f76ade405e9