1ドル=800ペソ超の歴史的ペソ安、中銀は市場介入で安定化を図る

(チリ)

サンティアゴ発

2019年11月27日

チリの通貨ペソは、11月15日1ドル=801.83ペソ(注1)に達し、変動相場制を導入した1999年以降の過去最安値を記録した(図参照)。10月上旬から続く反政府デモの長期化による国内の混乱で、通貨ペソへの不信感が強まったことが大きな要因となったとみられる。

図 月別対米ドルのチリ・ペソ為替レート推移
写真 サンティアゴ・ラスコンデス地区の両替所でも11月14日が安値のピークとなった(ジェトロ撮影)

サンティアゴ・ラスコンデス地区の両替所でも11月14日が安値のピークとなった(ジェトロ撮影)

事態を重くみたチリ中央銀行(以下、中銀)は、11月12日から3日連続でプレス発表を行った。12日にマリオ・マルセル総裁から、中銀はこのような異常事態への対応策を十分に有しているとの声明が発信されたものの、今後の為替相場への介入をほのめかすのみにとどまった。しかし13日には、ペソ安を抑制するための措置として、翌14日から2020年1月9日までの期間にドルスワップおよびレポ取引(注2)の入札を行うと発表した。さらに14日には、レポ取引の頻度や約定期間の拡張を含む追加措置が通知された。これら一連の措置が功を奏し、18日以降は700ペソ台まで値を戻している。

政策で電気料金の値上げを凍結するも、ペソ安の影響を懸念

チリ政府は、国民の鬱積(うっせき)した不満を解消するため、「社会アジェンダ」と呼ばれる政策を重点的に推進している(2019年10月31日記事参照)。そのうちの1つとして電気料金の改定法案(法21185号)を議会へ提出し、11月2日に官報公示された。同法は、デモ前に決定されていた2019年下半期における平均9.2%の電気料金の値上げを取り消すとともに、翌2020年12月まで料金を据え置くものだ。しかし、11月13日付「プルソ」紙によると、電力分野の専門コンサルタントらは、電気料金の7割を占める発電コストのみならず、残りの3割を占める送配電コストを考慮した場合、この値下げは妥当ではないと分析する。さらに、発電設備や燃料を諸外国から調達するためにはドルが介在する必要があることから、ペソ安が電気料金に影響する可能性が懸念されている。

(注1)前営業日における取引の売りと買いの仲値(中央銀行が発表)。

(注2)短期金融市場での取引の1つ。証券売買と同時に、一定価格での買い戻し(売り戻し)条件を付して約定するもの。

(佐藤竣平、岡戸美澪)

(チリ)

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