欧州委、英国の欧州委員候補の不指名に対し違反調査手続き開始

(EU)

ブリュッセル発

2019年11月15日

欧州委員会は11月14日、英国政府が次期欧州委員候補者を指名していないことについて、EU法に基づく義務不履行の疑いがあるとして、違法調査手続き開始の正式通告を行ったことを明らかにした外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。英国政府に対して欧州委は11月22日までに所見を提示することを要請している。短い回答期限だが、11月1日に予定していた次期欧州委員会の発足が遅延(2019年11月13日記事参照)していることもあり、発足のため急を要するとの認識を示している。

次期欧州委員会発足遅延の背景にブレグジットの影

欧州委によると、今回の通告に先立ち、ウルズラ・フォン・デア・ライエン次期欧州委員長は英国に対してEU法に基づく義務履行を要請していた。英国政府は11月13日付で回答を提出したが、英国は12月12日に総選挙を控えていることもあり、「次期欧州委員候補者を指名する立場にない」との認識を示唆しているという。

欧州委は「加盟国は、その国内法令の一般条項を理由として、EU法に基づく義務の不履行を正当化できない」とするEU判例法を引用し、英国によるEU離脱(ブレグジット)の2020年1月31日までの延期申請を容認した欧州理事会の決定でも、次期欧州委員候補の選出義務があることを明記していることも踏まえ、指名をめぐる英国政府の不作為はEU法に基づく義務不履行の疑いがあるとみている。

欧州委は英国政府の所見を審査した上で、あるいは英国政府から所見提示がない場合、必要に応じて「理由を付した意見書(Reasoned Opinion)」を発出するとしている。これはEU法履行を求める正式な要請で、EU司法裁判所での係争にかける前の最後通告に当たる。

次期欧州委員会発足遅延の要因は、英国政府が候補者指名を行わないためだけではない。欧州議会は11月14日、フランスのティエリー・ブルトン候補(域内市場・産業・デジタル単一市場担当)とルーマニアのアディナ=イオアナ・バレアン候補(運輸担当)に対する公聴会の模様を公開外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、両候補と所掌分野との利益相反の問題などについて審議した。欧州議会は公聴会の結審を宣言するために必要な情報を確認でき次第、欧州議会の関係常任委員会の勧告に基づいて、11月21日に会派代表者会議を開いて方針を決定。その上で、11月27日の欧州議会本会議で、次期欧州委員会の採決を行うとしている。

このほか、ウルズラ・フォン・デア・ライエン次期欧州委員長は11月13日、一部の欧州副委員長・委員の「担当呼称」を変更することで欧州議会と合意したと発表している。担当呼称が変更される欧州副委員長・委員(2019年9月11日記事参照)は表のとおり。

表 欧州副委員長・委員候補者の担当呼称の変更内容

(前田篤穂)

(EU)

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