デジタルヨーロッパ、AI政策の在り方の意見書公表

(EU)

ブリュッセル発

2019年11月14日

欧州の情報通信技術(ICT)関連産業団体のデジタルヨーロッパは11月13日、次期欧州委員会に対して人工知能(AI)の適切な活用のための政策における推奨事項をまとめた意見書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した。経済成長や産業競争力の強化、イノベーション推進に加えて、持続可能性や市民・社会の幸福にも配慮したEUとしての政策立案を求めた。

イノベーションを阻害しない規制アプローチを提言

デジタルヨーロッパがEUとしてのAI政策に求めるポイントは次のとおり。

  • 信頼できるAIの普及促進のための官民協働:AIに関わる競争力あるエコシステムを構築するため、政府と企業はルールや基準形成で連携する必要がある。このため、「AIハイレベル専門家会合」など試行的取り組みを継続し、EU加盟国も取り込んで、中小を含む事業者や公的部門、市民社会などの意見集約を進めるべき。
  • 多様な利害関係者・諮問機関の参画:政策形成や運用の上で、「AIハイレベル専門家会合」などのグループが主要な役割を果たすべき。次期欧州委員会の責務として、信頼できるAIの開発・利用などに関する分野ごとの評価・分析の徹底が必要。
  • リスク・ベースのアプローチの採択:AIに対する規制は、その用途や利用されるサービス分野など個々の事情に配慮して整備されるべき。AIの応用分野によってその影響や問題も千差万別であり、結果として透明性・説明責任・公正性を担保するための手法も異なる。一律的な規制ではなく、異なる措置が求められるケースを洗い出し、利用ケースに応じた原則と規制ガイダンスを組み合わせるようなアプローチが肝要。
  • エビデンス(科学的根拠)に基づく政策立案:AI技術の複雑性を念頭に、規制はエビデンスや客観的事実に基づいて、正確で包括的な視点で整備されるべき。(規制に問題がある場合)法令を全面見直しするのではなく、現行法制の潜在的な課題を評価し、問題を把握・解消するアプローチが望ましい。
  • 機敏かつ柔軟なプロセスの検討:技術発展に合わせて、その進化・成長を阻害しない規制の枠組みを整備すべき。規制は技術的に中立であるべきで、サンドボックス化(イノベーション促進のため一定の条件下で一時的に規制の適用を停止するなど)を通じてさまざまなオプションを検討・評価すべき。
  • デジタル社会への移行推進:AIの改善や活用のため、「研究開発・イノベーション投資の拡充」「デジタル教育・技能訓練の強化」「データ・アクセスやインフラ整備」による効果的な措置の導入。

(前田篤穂)

(EU)

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