行政長官の施政報告、住宅および土地政策などに重点

(香港)

香港発

2019年11月01日

香港特別行政区政府(以下、香港政府)は10月16日、2017年7月の就任以来3回目となる、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官の施政報告(施政方針演説)を行った。行政長官の施政報告は通常、立法会(日本の国会に相当)で行われるが、今回は民主派議員が演説を妨害し、議場での演説が困難となったため、テレビおよび香港政府のウェブサイトを通じて、演説の模様が配信された。

香港政府は昨今、デモ・抗議活動への対応に追われていることもあり、2019年の施政報告は、「住宅」「土地供給」「経済」および「民生」の4分野を重点とした(施政報告全体のポイントは添付資料参照)。

林鄭行政長官が「香港社会が直面する最も重い課題」と位置付ける住宅分野では、公営住宅の入居待ち市民を対象とした仮設住宅の供給数を大幅に増やすほか、2020年に約1万2,000戸の集合住宅を先行販売する。このほか、初めて住宅を購入する市民が、香港政府系の保険会社である香港按証保険から、住宅価格の9割に相当する住宅ローンを借り入れる際の住宅価格上限を、400万香港ドル(約5,600万円、1香港ドル=約14円)から800万香港ドルに引き上げる。

住宅建設用の土地の確保も積極的に進める。これまで「聖域」扱いだった香港・新界地区の私有地を、「土地回収条例」を活用して収用し、公営住宅の建設用地に充てる。このほか、2018年の施政報告で示したランタオ島東部の人工島開発計画については、専門家と若者が、住宅需要と人工島の住宅開発計画について議論するためのプラットフォームを設置する。

経済分野では、海外や中国本土の科学技術人材を獲得するための「科学技術人材入境スキーム」の対象企業の範囲を拡大する。企業のブランド構築、アップグレードおよび域内販売を支援する「BUD専用ファンド」には10億香港ドルを投入し、中小企業を支援する。加えて、中国本土および自由貿易協定(FTA)締結国の市場に参入する中小企業の助成上限額を、1社当たり100万香港ドルから200万香港ドルに引き上げる。

民生分野では、2019年8月に香港政府が発表した景気対策の一部を恒常化する(2019年8月22日記事参照)。幼稚園、小学校および中学校の生徒・児童が1人当たり年間2,500香港ドルの手当を、恒常的に受け取れるようにするなど、内容の充実を図る。

施政報告の詳細は、香港政府のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで確認できる。

(吉田和仁)

(香港)

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