モラレス大統領が辞任、メキシコとベネズエラは同氏を擁護

(ボリビア)

リマ発

2019年11月12日

ボリビアのエボ・モラレス大統領は11月10日、国営放送で国民に向け、辞職を表明し、同日付で議会に辞表を提出した。辞任は、10月20日の大統領選挙の候補だったカルロス・ディエゴ・デ・メサ氏をはじめとする反体制派の政治家や市民、警察によるクーデターの結果とした。また、反体制派が数多くの与党政治家、モラレス氏支持者や彼らの家族に対する脅迫と迫害を行っていると訴え、このような対立と支持者への迫害を止めるための辞職だと述べた。

一方、米州機構(OAS)は大統領選挙の監査報告を11月10日に発表した。その中で、1位のモラレス氏と2位のメサ氏との得票率の10ポイント差は統計学的にあり得ないとし、開票中継システムに明らかな操作が加わっていたと指摘した。その上で、OASは事務総長の声明として、選挙結果は無効とし、至急にあらためて選挙を実施するべきだとコメントした。これを受けて、モラレス大統領は再選挙を行うと表明したが、野党に加えて軍部もこれを拒否して大統領辞任を求め、これが最終的な辞意表明につながったと各メディアは分析している。

大統領辞任に伴い、アルバロ・マルセラ・ガルシア・リネラ副大統領とアドリアーナ・サルバティエラ上院議長、ビクトル・ボルダ下院議長も併せて辞任した。そのため、憲法で定められた大統領継承順位に基づき、臨時大統領にジャニネ・アニェス・チャベス上院副議長(野党)が名乗りを上げているが、今後、議会で臨時大統領就任の可否についての審議が行われる見込みだ。

モラレス大統領辞任に対して、メサ氏は歴史的な日で独裁政権の終焉(しゅうえん)とコメントした。また、メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は、今回の辞任はクーデターの結果だと非難した。対立と暴力を避けるためのモラレス大統領の決断に同情を表明した。また、社会主義国であるベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領も直ちに、反体制派の行動をクーデターと非難した。また、「プエブラグループ」(注)も、リーダーで次期アルゼンチン大統領のアルベルト・フェルナンデス氏を通じて、反体制派に対する批判声明を出している。

(注)2019年7月にメキシコのプエブラ市で創設され、32人の政治家など著名人で構成された革新主義を掲げるグループ。

(設楽隆裕)

(ボリビア)

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