インド離脱表明のRCEP、フィリピン経済には好影響か

(フィリピン)

マニラ発

2019年11月20日

東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉からインドが離脱したとしても、2020年の協定署名を目指す残り15カ国が妥結すれば、フィリピン経済にとってプラスとなる、とフィリピンの複数の専門家や政府高官、企業が主張している。11月11日付の複数の地元紙が報じた。

フィリピン大学のパタリンフグ教授は、インドはフィリピンにとって特にBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)産業の競争相手のため、RCEP交渉からのインド離脱はフィリピンに良い影響を与えると指摘した。一方で、セメントや鉄鋼、建設業界といった高関税やセーフガードによって保護されている国内産業は、RCEP妥結後の競争でマイナスの影響を受けるだろうとみている。

アジア大洋州大学のジョージ・マンザノ准教授は、米中貿易摩擦で世界経済が減速する中、RCEPはフィリピン経済の推進力になるとし、「電子商取引のルール作成によって域内の電子商取引が加速し、特に中小企業にとって新たなビジネスチャンスとなる」と語った。

貿易産業省のラモン・ロペス長官は、RCEPによって92%の国内製品が恩恵を受けるとし、「RCEPは域内のサプライチェーンを統合し、フィリピン製品の調達を検討する海外企業が増加する」と述べた。また、ASEANの経済統合が第4次産業革命の到来とそのタイミングを同じくすることによって、「より大きな貿易や投資はテクノロジーの進化を加速させる」とした。

国内不動産最大手アヤラ・ランドの関係者は、RCEPは同社のASEAN地域戦略を加速させ、ビジネスに大きな恩恵をもたらすとみている。同社は2015年にマレーシアの不動産会社MCTを買収するなどASEAN進出を進めている。同じく国内インフラ最大手のメトロ・パシフィック・インベストメンツの関係者は、RCEPは単なる経済統合のスタートラインにすぎず、その経済効果には時間がかかるが、将来のフィリピン経済に必ず良い影響を与えるとしている。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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