1~8月の海外直接投資純流入、前年同期比39.7%減、税制優遇制度の行方を懸念

(フィリピン)

マニラ発

2019年11月21日

フィリピン中央銀行(BSP)は11月11日、8月の海外直接投資(FDI)の純流入額が前年同月比45.1%減、前月比23.4%減の4億1,600万ドル、1~8月のFDI純流入額の合計は前年同期比39.7%減の45億3,500万ドルとなったと発表した。

8月のFDI純流入額の内訳は、全体の36.8%を占める株式・投資ファンド持ち分が1億5,300万ドルで前年同月比31.6%減、63.2%を占める負債性資本が2億6,300万ドルで50.8%減といずれも大きく減少した。株式・投資ファンド持ち分の内訳は、株式資本純流入額が7,700万ドル(55.3%減)、収益の再投資が7,700万ドル(46.0%増)となった(添付資料参照)。

BSPはFDI純流入の大幅な減少理由について、長引く世界経済の停滞が投資家心理を冷え込ませており、フィリピンに対する投資計画を延期させているとした。一方で、国内のエコノミストは、現行の税制優遇措置を最長で5年以内に打ち切るCITIRA法案(2019年10月2日付地域・分析レポート参照)の国会での審議状況を投資家は見守っているとした。ユニオン銀行の関係者は、米中貿易摩擦といった外的要因に加えて、CITIRA法案によって現行の税制優遇制度がどのように見直されるかが海外投資家の最大の懸念事項と説明した。リサール商業銀行(RCBC)関係者は、ASEANやアジア諸国の投資家はフィリピン以外に選択肢は幾つもある中で、CITIRA法案によってフィリピンの税制優遇制度が抜本的に改革された場合、投資家は投資コストがより安価で予測可能な国を選ぶだろうとした。

(坂田和仁)

(フィリピン)

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