IMF、フェルナンデス次期政権との債務再編交渉を準備

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2019年11月21日

IMFのスポークスマンのジェリー・ライス氏は11月7日の定例記者会見で、2018年6月からアルゼンチンに対して実施しているスタンドバイ融資の第5次レビューにかかる54億ドルの融資実施に関連し、IMFはアルゼンチン支援のため前提条件なしに再交渉を行う準備ができていると述べた。具体的な公式会合などの予定はまだないが、12月10日のアルベルト・フェルナンデス新政権発足までの移行期間にも、必要に応じて次期政権との話し合いの場を設けることを示唆した。

11月8日付「クロニスタ」紙は、記者会見翌日の8日に早くも非公式の会合が行われたと報じている。同日に米国マイアミ大学で行われたラテンアメリカ・セミナーで、フェルナンデス次期大統領の経済顧問ギジェルモ・ニールセン氏がアルゼンチンへの投資を呼び掛けるスピーチをしたが、その場にIMF西半球局長のアレハンドロ・ウェルナー氏も登壇していたため、両氏による非公式会合が行われた可能性があるという。IMFスポークスマンもその可能性を否定しなかった。

2018年にアルゼンチンが経済危機に直面し、IMFにとって過去最高額となる573億ドルのスタンドバイ融資を受けることができたのは、マウリシオ・マクリ政権が米トランプ政権と緊密な関係を築いていたためとも言われている。そのため、54億ドルの追加融資の実行が待たれる今、フェルナンデス次期政権に対するトランプ政権の動向に注目が集まっている。マクリ政権は米国同様、ベネズエラの大統領としてフアン・グアイド国会議長を支持する立場を取っていたが、フェルナンデス次期大統領はいまだこの問題への言及を避けている。さらに、次期政権で副大統領を務めるクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル元大統領は自身が大統領職にあった2007年から2015年までの8年間、反米左派のチャベス政権、それに2013年より続くマドゥロ政権を支持していたため、次期政権がマクリ政権同様の立場を維持するかは疑問が残る。しかし、トランプ大統領は10月の大統領選挙後、当選したフェルナンデス氏に電話で祝意を伝えるとともに、次期政権への支援をIMFに要請していることを伝えたとの報道もあり、現時点では両者間の対立は見えていない。

(津下みなみ)

(アルゼンチン)

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