サービスチャージ法、人件費抑制のためホテル契約社員を対象外に

(フィリピン)

マニラ発

2019年11月26日

ホテル業界団体のフィリピン・ホテル・オーナーズ協会(PHOA)は労働雇用省(DOLE)との間で、8月にドゥテルテ大統領が署名したサービスチャージ法の対象からホテルの契約社員を外すことにする合意書に署名した。11月22日付のフィリピン各紙が報じた。

サービスチャージ法は、サービス料の85%をサービスの提供を行う被雇用者に、15%を雇用者に配分することを定めていた労働法96条を改正し、サービス料全額をサービスの提供を行う被雇用者に配分することにした。徴収したサービス料は被雇用者の基本給に参入され、基本給をベースに退職金やボーナス、時間外労働と週休労働の割増料金が算出されるため、サービス料を受け取る企業の人件費向上につながると考えられている。

PHOAのアーサー・ロペス会長は、フィリピン国内で200万人とされるホテル従業員の10~15%を占める契約社員は、一時的に労働力が必要となる大きな宴会やイベントが開催される時だけ従事しているとした上で、契約社員をサービスチャージ法の対象とした場合、業界全体で年間200万ドルの損失が発生するとしていた。

ロペス会長はさらに、フィリピンはその豊富な観光資源にもかかわらず旅行料金が比較的高く、海外投資家による国内観光業への新規投資の阻害要因となっているとし、サービスチャージ法の成立によってさらにフィリピンの競争力は低下すると警鐘を鳴らしていた。世界経済フォーラムが発表した「2019年旅行・観光業競争力レポート」によると、フィリピンは世界140カ国中75位にとどまる。

サービスチャージ法の施行細則は11月2日までに公布される予定だったが、22日時点では公布されていない。サービスチャージ法は人件費上昇分の消費者への転嫁可否について規定しておらず、仮に施行細則でも定められない場合は、フィリピン全体のサービス業の価格上昇につながることも考えられる。

(坂田和仁)

(フィリピン)

ビジネス短信 69debd3a6f263e15