海水淡水化プロジェクト、丸紅などが落札

(チリ)

サンティアゴ発

2019年11月13日

チリ国営銅公社(CODELCO)は11月4日、海水淡水化プラント建設プロジェクトの落札者を発表した。チリ北部のアントファガスタ州に所在するチュキカマタ(Chuquicamata)、ラドミロ・トミク(Radomiro Tomic)、ミニストロ・アレス(Ministro Hales)の3つの鉱山へ淡水を供給するもので、丸紅が率いる企業コンソーシアムが落札した。コンソーシアムは丸紅のほか、チリの電力大手トランスエレク(Transelec)、イタリアとアルゼンチンに本社を有する建設大手テチント・チリ(Techint Chile)により構成される。

淡水化プラントの海水処理容量は、初期段階で毎秒840リットルで、将来的には毎秒1,956リットルまで拡張可能な見通しだ。2022年の操業開始を見越し、プラントの建設は2020年の第1四半期(1~3月)に開始される予定で、建設のピーク時には約2,700人の労働者の動員が見込まれている。

CODELCOのウェブページでは、上述の入札結果と併せ、丸紅が世界各地で農業や化学、エネルギー、交通、電力、インフラなどのさまざまな産業分野で豊富な経験を有し、チリ法人も60年以上の歴史を持つ日本企業と紹介されている。

海水の淡水化促進の背景に見られるチリの深刻な水不足

チリで海水淡水化プロジェクトが推し進められる背景には、ここ40年間にわたって続く深刻な水不足がある。10月3日の政府発表によると、アタカマ州、コキンボ州、バルパライソ州、首都圏州、オイギンス州、マウレ州の6州では、2019年1月から8月までの降水量が1981年から2010年までの同期間の平均値と比して50%以上減少しており、州内で畜産業、養蜂業、農水産業などに従事する事業者へ大きな打撃を与え、119のコムーナ(注)を対象に緊急事態宣言も発令された。国内の慢性的な降雨量減少に伴う水不足が続く中、海水に活路を見いだす淡水化技術の積極的な導入に大きな期待が集まっている。

(注)コムーナとは、国の地方行政の基本単位のこと。

(佐藤竣平)

(チリ)

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