ベラルーシ下院選で野党候補者は当選できず、プロセスに欠陥と欧州の監視団

(ベラルーシ)

欧州ロシアCIS課

2019年11月20日

ベラルーシで代表者院(下院・定数110)選挙が11月17日に実施された。19日時点の暫定結果では、無所属89議席、共産党11議席、労働・公正党6議席、愛国者党2議席、農業党1議席、自由民主党1議席だった。前回議席を獲得した唯一の野党「統一国民党」の当選者はおらず、議会から野党が駆逐されたかたちとなった。

選挙監視団は45カ国437人で構成されたが、欧州安全保障協力機構(OSCE)や欧州評議会議員会議(PACE)などの監視団は民主主義にのっとったプロセスが欠如していたと批判している。OSCE議会総会代表団のディトミル・ブシャティ団長は、選挙管理委員会に野党が介在する余地がなかったため、選挙が重要な政治問題への住民参加の機会として考慮されなかったと指摘。PACE選挙監視短期ミッション団長兼特別コーディネーターのマーガレット・セデルフェルト氏は、立候補届け出は増加したが、選挙登録が制限された点を挙げ、「民主主義の義務が順守されず、議会の独立性や有権者と候補者の基本的自由が侵害され、議会選が形骸化した」と批判した。PACEのデビッド・ブレンカトラ代表団長は、投票箱の封印が簡単に取り外せるようになっているなど、不正を介在させる余地があったと指摘した。他方、CIS選挙監視団長のセルゲイ・レベジェフ氏は「選挙はベラルーシの憲法と選挙法にのっとって実施された。自由と透明性が確保され、民主的な選挙の原則に合致していた」と述べた(ベラルーシ情報会社「ベラパン」11月18日)。

首都ミンスクの分析センター「ストラテギヤ」の政治専門家ワレリー・カルバレビッチ氏は、野党候補者が当選できなかった理由について、内政面では政治に対する国民の信頼の低下、外交面ではベラルーシが制裁解除や関係改善など西側から得られるものを既に獲得しており、西側諸国も地政学的な問題の方が重要で、ベラルーシが民主主義である必要性が薄れていることが背景にあると分析。PACEは選挙が欧州基準に基づいて行われなかったと主張するだけで、それ以上のことはできない存在と述べた(「ベラパン」11月18日)。

国際問題評議会「ミンスク対話」のプログラムコーディネーターで政治専門家のデニス・マリヤンツォフ氏は、前回の下院選では、野党が議席を獲得するかどうかが重要な焦点だったが、今回はこの点は重要ではなくなったと指摘。西側にとってベラルーシは安全保障上の重要なパートナーとなっており、そのためには関係改善とベラルーシ国内政治の安定の方をより望んでいると語った(「ベラパン」11月18日)。

なお、ベラルーシの大統領選挙は2020年8月に実施することが見込まれており、ルカシェンコ大統領は11月17日、下院選挙後に記者団のインタビューに応じ、大統領選挙に立候補すること表明した(「ベラパン」11月17日)。

(齋藤寛)

(ベラルーシ)

ビジネス短信 4c348ce1dc820acd