原油流出が疑われるタンカー特定、所有会社に通告と連邦政府が発表

(ブラジル)

サンパウロ発

2019年11月11日

2019年9月以降、ブラジル北東部海岸を中心に全長2,000キロにわたって原油が漂着し、ブラジルの環境・観光・漁業に甚大な被害を与えている原油漂着問題(2019年10月30日記事参照)が、新たな局面を迎えた。

ブラジル連邦政府は、漂着原油が流出した疑いのあるギリシャ船籍のタンカーを特定し、同船舶所有会社のギリシャ企業に対して疑いを通告、情報提供を要求したことを11月4日に発表した。被害額は算定中としながらも、20億レアル(約540億円、1レアル=約27円)に達する見通しを明らかにした。

発表によると、原油流出源の特定作業を行った連邦警察と海軍による捜査は、既に終了している。捜査結果によると、同ギリシャ船籍タンカーは、ベネズエラで原油を積載してブラジル東北部海岸沖の大西洋上を航行し、アフリカ喜望峰経由でマレーシアのタンジュンブルアス港において他の原油運搬船への積み替えを行ったとしている。原油流出は7月末ごろとしている。11月2日付の当地主要紙が報じた連邦警察の情報によると、ブラジル東北部パライバ州海岸から700キロの地点で流出原油が確認され、流出量は同タンカー積載能力110万バレルの1.8%弱に相当する1万8,000バレル(約300万リットル)と報じている。

タンカーを所有するギリシャ企業への通告は、ブラジル連邦警察ルートとブラジル海軍ルートの2通りで行われているもようだ。

連邦警察は国際刑事警察機構(インターポール)を通じて、ギリシャ企業に対して原油流出の実態、ベネズエラでの原油積載量や原油の供給先などの情報を明らかにすることを求めていることを発表した。連邦警察は、ギリシャ企業からの回答を分析するため、起訴は行っていないことも明らかにしている。

一方、ブラジル海軍はギリシャ企業に対し、ブラジル・ギリシャ両国の海事当局を通じて関連資料の提供を要求している。ギリシャ企業は自社ウェブサイトで、カメラ、データなどの記録から原油流出を裏付ける証拠はないとしている。ブラジル海軍に情報を共有する意向も明らかにしているが、依然として真相解明には時間がかかりそうだ。

(大久保敦)

(ブラジル)

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