ヤンデックスなどロシア大手企業・団体6社、AI分野の企業連合立ち上げ

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年11月21日

ロシアは、2017年に策定した「デジタル経済プグラム」の対象分野の1つに人工知能(AI)を掲げている(2019年6月19日付地域・分析レポート参照)。モスクワで11月8、9日、東欧最大規模のAIに関するカンファレンス「AIジャーニー」が開催され、プーチン大統領が登壇したほか、ロシアの大企業・団体6社によるAI分野のアライアンスの立ち上げが発表された。

プーチン大統領は講演でAI技術について、数学や物理学、心理学、言語学などの蓄積に基づく「高度技術の真の塊」と表現し、技術発展のためには事業発案や創造性が最大限発揮できるような条件整備が不可欠と指摘。加えて、AIの導入促進にはプログラマーや数学者、コンピュータ言語学者、データ処理やディープラーニング分野の専門家などの人材育成を量と質の両面で強化する必要があると強調した。

9日には、最大手行ズベルバンクと、大手石油会社ガスプロムネフチ、大手インターネット会社のヤンデックス、メール・ルー、大手通信事業者MTS、政府機関のロシア直接投資基金(RDIF)の6社・団体がAI分野の企業連合「AIロシア・アライアンス」(以下、アライアンス)の創設を発表した。

アライアンスは、世界のAI技術市場でアライアンスメンバーのリーダー的ポジションの確保を目的とし、AI技術市場や製品・サービスの形成・発展に向けた協力、実業界との調整、AIコミュニティーの創設と活性化など、AI分野の発展に向けた技術要素の結束を講じる。具体的には、a.調査・分析活動、b.国際連携、c.産業課題の分析と解決方法に関する議論、d.全ての経済分野におけるAI技術の開発・テスト・導入・使用に必要な国内インフラ整備の支援、e.アライアンス企業と他の技術サプライヤー・開発者とのソリューション開発におけるAI技術・同技術使用に向けたオープンスタンダードの作成、f.現行の法制度にのっとった製品開発協力、g.実際の生活への技術適用を試験するための研究ニーズの結合などを行うとしている。

プーチン大統領は10月11日にロシアのAI発展に関する大統領令(2019年10月10日付第490号)に署名。これは、これまで政府と実業界が議論してきた(2019年6月6日記事参照)「2030年までの国家AI発展戦略」を規定するもので、AIへの世界全体の投資額は2018年に215億ドルだったものが、2024年には1,400億ドルまで拡大すると予測し、世界中でAIに基づく技術ソリューションが加速化する中で、ロシア政府は研究開発やプログラム開発、技術発展に向けたデータアクセスと品質向上への支援を行うとしている。今回立ち上げたアライアンスの活動内容にも、この国家戦略との協力や戦略に寄与する調査活動の実施が盛り込まれている。

(齋藤寛)

(ロシア)

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